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【報告】リカレント講座インタビュー

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2023.06.12
社外への研修派遣による人材開発とビジネスの創出

企業と地域が連携する意義とは何か
-サントリーグループ×群馬県・上野村 連携プロジェクトに学ぶ-

チェンジ・メイカー育成プログラム第4期を通じて、自社社員を派遣頂いたサントリーグループと対象地域となった群馬県上野村による連携プロジェクト(「ボトルtoボトル:水平リサイクル事業に関する群馬県上野村との協定」「地方創生人材の上野村への出向」)が生まれました。本プログラムの意義やプロジェクトの社会的な価値について、サントリー食品インターナショナル株式会社管理本部の藤巻恒様にお話をお聞かせ頂きました。

話し手:サントリー食品インターナショナル株式会社 管理本部 藤巻 恒部長
聞き手:立命館東京キャンパス 宮下 明大、
    チェンジ・メイカー育成プログラムファシリテーター 酒井 章


●チェンジ・メイカー育成プログラムに御社社員を派遣いただいたのは、どのような課題意識からだったのでしょうか?
藤巻さん:我々の会社に限らないかもしれませんが、メーカーとして、過去からずっと長期雇用を前提とした働き方がありました。当社は、その精神を大事にしながらも、人生100年という時代の中で、サントリーという枠組みだけに捉われない「企業の枠を越えたオープンなキャリアパス構築」が重要だと、課題意識を持っていました。このプログラムは、新たな試みに繋がるものと感じました。
加えて、企業、自治体、大学といった業種も役割も世代も異なる産官学のメンバーで、取り組むことには、普段の仕事では得られない刺激があるだろうといったことが、社員に参加して欲しいと考えたきっかけになりました。

●プログラムに参加された前と後で、社員の方の変化は何かお感じになられましたか?
藤巻さん:ビックリしました。今やっている仕事に対して少し閉塞感のようなものを感じていた社員が、プログラムの中でいろいろな人たちと混ざり合い、積極的に話したり発案したりしていることを本人から報告を受け、こういう一面もあるのか、という驚きがありました。本人にとっても、普通の仕事とは違う時間を過ごしたことが新鮮だったのだと思います。自分で考え、発案したアイデアを、周りのメンバーと真剣に考えて形にしていくチームとしての活動に面白さがあると言っていました。

●このプログラムの意義や効果は、どのようなところに感じられましたか?
藤巻さん:現在私たちは、内閣府の地方創生人材支援制度を通じて、全国の自治体に社員を出向させているのですが、今回のプログラムで、自治体が抱える課題というものを私自身も知ることができましたし、派遣をする意義を、上野村という志の高い自治体を通じて改めて感じることができました。
一方で、私たちはシニアの職域開発という側面でも活動しているのですが、それが自治体側でもしっかりとニーズとしてあるのだということを実感ができたことにも大きな意義を感じています。今回のプログラムで弊社の社員が行った提案やアイデアは、サントリーの中ではよく議論されていることかもしれませんが、自治体の皆さんには新鮮に受け止められたのかもしれない、という可能性を感じました。

●今回、本プログラムに参加を呼びかけられたことに対して、参加者ご本人はどのように感じられていたのでしょうか?
藤巻さん:なぜ私なのか、なぜ上野村なのか、はじめは戸惑いがあったように思います。我々のような一定規模の会社の場合、実施する研修にはしっかりとした目的や目標があり、そこに向けた計画があります。しかしこのプログラムでは、「目的を考えること」が一つの狙いになっていて、やっていくに従って、こういうことなのかという理解が進んでいく。私たちのような団塊ジュニアの世代は、目的や目標を考えなくても与えられてきた世代なのですが、参加した社員も、プログラムが進む中で改めて「自分で考えなくてはいけないんだ」と自分自身が考えるように変化していったように感じました。

●本プログラムに対して、感じられた課題や今後への期待はありますか?
藤巻さん:上野村は黒澤村長をはじめ、比較的、新しいことに取り組むことに旺盛な自治体だと感じましたので、提案をビジネス化するところまでやり切って頂きたいと思います。地域に対して提案をするという「体験」で終わるのではなく、自治体の中で事業化することで、プログラムの面白さや意義が増すと思います。

●今回、上野村との連携協定が決まった「ボトルtoボトル水平リサイクル事業」についても概要をお聞かせいただけますでしょうか?
容器・包装|サステナビリティ|サントリー食品インターナショナル (suntory.co.jp)
藤巻さん:我々のペットボトルも石油由来の原料を使用していますが、昨今のCO2排出問題の中で、ペットボトルのリサイクルが重要になってきました。回収されたペットボトルが、食品トレイや卵パックなどにリサイクルされてしまうと、結局は廃棄、焼却されてしまいますので、実はサステナブルとは言えません。しかし、ペットボトルをペットボトルにリサイクルすれば、繰り返し利用し続けられる、ということに我々は価値を感じており、ペットボトルの100%サステナブルボトル化を目標に、10年以上前から活動をしてきました。今回、バイオマスや循環型経済に積極的に取り組まれている上野村さんとのご縁を頂けたことは、弊社のサステナブル担当者も大変喜んでいます。



●連携協定に加えて、この4月から上野村への人材出向もスタートされました。御社の地方創生の取組みの目的についてもお聞かせいただけますか?
藤巻さん:数年前から地方自治体への人材出向を始めました。地方におけるデジタル分野の人材不足というのはよく聞く話ですが、実際にさまざまな地域と触れ合ってみると、IT領域に限らず大きなシナジーが生まれるのではないか、と以前から感じていました。
例えば、岐阜県海津市に出向している弊社社員によりますと、我々が普段やっているような営業活動、PDCAを回すことでお客様への接し方などが自治体の刺激になり、大きな成果に繋がっているとのことです。 一人ひとりが社内で輝き続けることはもちろん重要なのですが、年代によって周囲からの期待や求められる役割は変化していきます。働く場所が自治体に変わっても、周囲から期待されたり必要とされたりすることを体験できるということが重要なのではないかと思います。
また、先ほどのボトルtoボトルや公共施設への自販機の設置など、自治体との接点が重要な仕事も増えております。その意味でも、自治体で働いた経験を持つ人材が、サントリーの中でしか働いてこなかった人と比べると、自社に戻った後も幅広い視野や知見を持って仕事ができるのは、本人にとっても大きなことではないかと思います。

●最後に。今後、企業と自治体(地域)が連携していくためのポイントについてどのように考えられますか?
藤巻さん:企業や自治体はそれぞれの慣習やルールに準じて活動を行う時代から、お互いの距離を詰めて刺激し合うことが大事な時代になっていくと思います。そのために、まずは「触れ合う機会を増やすこと」が必要だと感じています。

【参考】チェンジ・メイカー育成プログラム(5期)詳細はこちら
【参考】チェンジ・メイカー育成プログラム(4期)レポートはこちら