研究科長挨拶

研究科長 徳田 完二
#4


新たな対人援助学の創造を目指して

クラスター・ゼミ 臨床心理学領域

徳田 完二

2001 年に設立された立命館大学大学院応用人間科学研究科は対人援助の領域を中心に600 人を超える修了生を社会に輩出しています。私たちは〈連携と融合〉というコンセプトを中心に据え、教育、研究、そして対人援助の実践に取り組んできました。。

この研究科の特色の一つは多様性です。私たちは、特定の学問領域に縛られず、心理学、社会学、教育学、福祉学などさまざまなものが混じり合うことに価値があると考えています。ただし、いろいろなものが雑然と集まっていればよいと考えているのではありません。異なる立場、異なる視点、異なる方法、異なる経験の相互刺激によって今までになかった新しい知と実践が生まれることを願っています。そのような営みを私たちは「新たな対人援助学の創造」と呼びたいと思います。

この研究科の二つ目の特色は実践性です。対人援助の学は実践に役立つものでなければなりません。このため、私たちは実習あるいは実践活動を重視しています。正課に組み込まれた実習科目だけではなく、正課外で行われるさまざまなプロジェクトも用意しており、院生はそれぞれの興味関心に応じてそれらに参加することが期待されています。

この研究科の三つ目の特色は現場重視性です。私たちの社会にはさまざまな問題があり、私たちは絶えず、新たに取り組むべき問題に出会うことを余儀なくされます。ですから、既存の知識を身につけ、それを現実に当てはめようとするだけではなく、問題が生じている「現場」をとらえ、そこから問題改善に向けた理論や方法を生み出していかなければなりません。そのような創造的活動に必要なのは、広い視野、柔軟な発想、鋭い分析力、粘り強い実践力などでしょう。それらを養う方法として、他の専門領域との理論的な交流、他の専門職種との実践的な交流が必要かつ有用だと私たちは考えています。

この研究科には、幅広い年齢の多様な背景を持った人が入学してきます。そのような人たちが互いに刺激し合うこともこの研究科の特色の一つです。そうした院生たちが持っている対人援助的な問題意識から、私たち教員も多くのことを学びます。学ぶというのは相互的なもので、教える側と教えられる側が入り組んでいるのです。そのような相互作用を重ねることにより、この研究科がさらに発展していくことを私たちは願っています。