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ネット空間でいかに人と繋がるか。
ウィズコロナ時代の
「情報」との付き合い方とは。

経営学部
菊盛 真衣 准教授

Contents

大学の授業のこれから

ロナ禍は、先生の授業には
どのように影響しましたか?

受講生の多い授業はオンデマンド配信と課題提出を組み合わせて行っています。ただ、学生たちのリアクションが見られない中での授業づくりは難しく、事前準備にはかなり時間を費やしました。学生たちにモチベーションを維持してもらうために、配信する動画は短く区切り20分×3本程度にし、集中力が続くように工夫しています。少人数のゼミはライブ配信で実施しましたが、これまでの対面授業に近いスタイルで進められました。チャット機能を使うと、学生からの意見が出やすかったですね。やはり大学の授業にはインタラクティブなコミュニケーションが必要だと感じました。


ンラインへの移行は
比較的スムーズだったのですね。
課題は感じましたか?

対面授業では、隙間時間に学生同士で雑談したり、教員から学生に個別に声を掛けたりすることができましたが、オンラインでは難しいです。大勢が集まる中で個別に話すなどして、インフォーマルな交流ができなくなったことには課題を感じています。ちょっとした雑談も、実は社会生活的には重要な交流であり、学生にとっては大学に通う楽しさの一部でもあります。今後は、対面とオンラインを織り交ぜて授業を行うことになろうかと思います。その時に、学生同士の交流を促すような取り組みが必要になるのではないでしょうか。学生たち自身の意見も吸い上げながら、より効果的な授業計画を行いたいですね。


自身の研究面への
影響はいかがでしたか?

4月の初めは授業が休講になったことで、これまで着想段階だった研究について、思考を深めるためのまとまった時間が取れました。また、このコロナ禍を受けて、大学教育の意義というものも考え直しましたね。大学はさまざまな発想を集めて知を創り上げていく “集団の知”を作る場です。その活動の場がオンラインになった時にどう教育を実施するのか、オンラインとオフラインのバランスをどう取っていくかなど、現状を再評価しながら検討していきたいと思っています。教員の役割や教育の意義、教員自身のユニークさなどについても深く考えていきたいですね。

消費者行動などへの影響は?

専門の消費者行動において、
コロナ禍はどう影響したとお考えですか?

コロナ禍における社会の変化を見ると、一つはSNSにかける時間がとても増えたという状況があるのではないでしょうか。簡単には会えない状況でも、やはり人は誰かとの交流なしでは生きていけません。そのため、自然とSNSの中にコミュニケーションを求めるようになっています。また、外出自粛の影響を受けて、ネット通販市場が拡大しています。ここ数年で音楽や電子書籍などのネット通販市場は拡大しましたが、食品業界ではあまり進んでいませんでした。それがコロナの影響で、食品をネット購入する人が増えましたよね。新たなジャンルでネット通販が進展し、購買の方法に変化が出てきたことは興味深いと注目しています。


かに、インターネットに接する時間は
とても増加しました。

SNSの利用が増えたことへの懸念はありますか?

人々が、SNSの情報を信じやすくなっているという状況です。SNSを見るとき、無心で画面を眺めていませんか?SNSで目に入るものすべてを信頼し、受け入れる価値があると無意識に思ってしまう傾向があります。SNSでは、自分が好きな人をフォローしていることから、自分が認めた人の発信した情報だからと安心し、疑いを持たずに受け入れてしまいやすいです。また、SNSの情報に対する信頼度が上がる一方、クチコミサイトなどで誰が発信したのか分からない情報に対する不信感・懐疑心は高まっています。これは特に20代を中心とした若者世代に見られる傾向です。若者を中心に、ユーチューバーやインスタグラマーが紹介したものに関心を持ち、彼らの薦める商品は良いものだと感じる人は増えています。これは悪いことではありませんが、SNSを利用するときには自分の頭を使うことが重要です。情報ソースを確認したり、複眼的な視点で見たりすることを忘れないようにしなければなりません。


分がフォローしている
アカウントだからといって

無条件で信頼してしまうのは、
要注意ということですね。

そうですね。また、自分のマインドのコントロールも、SNSを利用する人にとっては重要です。Instagramなどの投稿を見ていると、他人のキラキラとした生活ばかりが見えてきて、それを自分と比較して嫉妬したり、不安になったりすることもあるでしょう。SNSで見えることは、あくまでその人の一面であってすべてではありませんが、頭で考えずに見ていると、その内容を全面的に信じ込んでしまいがちです。特にSNSは、対面に比べて物事を良く魅せやすいツールです。信用したくなる情報でも、一度自分で冷静に考えてみるというステップが必要だと思います。


費者行動の変化によって、
売る企業側は変化が必要になりそうですね。

SNSによって、企業は消費者と結びつきやすくなっています。ブランドのコミュニティを作って、そのコミュニティメンバーのSNS上の拡散力を使い、PRすることもできるようになりました。企業側は、SNSの伝播力をマーケティングに生かそうと注力していると感じます。若者のトレンドは目まぐるしく変わりますし、彼らの嗜好も多様化してきているため、ひとくくりに扱うことはできません。その中で、いかに心に刺さるものを打ち出すか、数ある商品の中から選ばれるためにいかに商品の個性と若い消費者の需要をフィットさせるかが、企業の課題になっているのでしょう。常に若者のトレンドを把握しておく必要がありそうです。

いま、私達にできることはなにか

ま、学生たちに
伝えたいことは?

体を大事に、健康第一で過ごしてほしいと一番に伝えたいです。そのためには、自分や周りの人の健康を守れるよう、大人として責任をもって行動する意識を持ってほしいと思います。また、生物の生存の基本でもありますが、環境に適応することがとても重要になると思います。コロナに限らず、AIやロボットの発展、近年頻発している災害、あるいは気候変動など、さまざまな変化が起こっています。変化していく環境に、自分自身を適応させる意識を持ってほしいと願っています。


境に適応するには
どう行動するべきでしょうか?

社会の変化に対して、自分には何ができるかを考えることです。私のモットーは「ピンチはチャンス」。ピンチこそ人間の真価が問われる瞬間です。生活スタイルや働き方など、既存の考え方や仕組みが変わろうとしている今だからこそ、物事や世の中を変えるチャンスだと思って、自分がどう行動すれば世の中がどう良い方向に変化するか、その変化にどう貢献できるのかを見つめてほしいですね。この機会に、社会に貢献する方法や働き方について思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


生たちには大学で
どのように過ごしてほしいですか?

“研究”に取り組んでほしいです。自分で問いを立て、その問いに対して解決策を考え、答えを導き出すという一連のプロセスが研究です。特に立命館大学はそのプロセスを経験する機会が多い大学ですし、その経験は卒業後の仕事にもきっと役立つでしょう。そのためのプログラムもたくさんありますから、先生たちを上手く使って、自分から学びの扉を開いていってほしいと思います。

Message

“研究”をしてください。
社会をもっと良くしたいと思うことがスタート。
一つひとつの課題を解決していけば
世の中は良い方向に変わります。
その意識を持ち、
頭を使って能動的にアウトプットするために、
自ら課題を見つけて答えを出すという
経験を積み重ねてもらいたいです。

Profile

菊盛 真衣准教授

所属学部 / 経営学部 経営学科

専門分野 /マーケティング、消費者行動、社会的相互作用、eクチコミ

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