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2016.11.03

比較福祉国家研究者スタイン・クーンレ教授による講演会を開催~経済のグローバル化と高齢化によって共通の課題を抱える北欧と東アジアの福祉国家の現状~

政策科学研究科においては、東アジア・東南アジアからの留学生が英語基準・日本語基準で数多く学んでいますが、政策のアジア的な特徴とは存在するのでしょうか。アジア的な特徴とは、国際比較を通してその立ち位置がみえてくることがあります。

政策科学研究科では2016年11月3日(木)にOIC総合研究機構地域情報研究所との共催で比較福祉国家研究の第一人者であるスタイン・クーンレ教授をお招きして、“Globalization and Development of Social Policy in a Perspective of European and East Asian Experiences”というタイトルのもとでの講演会を開催しました。

ク―ンレ教授は、ノルウェー国立ベルゲン大学比較政治学部教授であり、同時にこれまで、中山大学(広州)名誉教授、南デンマーク大学福祉国家研究センター名誉教授等を歴任し、現在は復旦大学(上海)名誉教授も務めてこられました。近年は東アジア諸国との比較研究をおこなっており、2016年10月22日から11月11日まで、日本学術振興会 外国人招へい研究者として、立命館大学OIC総合研究機構地域情報研究所に滞在されました。

講演ではまず、西(欧米)と東(東アジア・東南アジア)における社会福祉や国家の役割に関する理念の相違が歴史的アプローチから説明されました。たとえば、西では個人が全てであるのに対し、東では個人はシステムの一部にすぎず、また、西では福祉は権利と結びついた「契約」であるのに対し、東では福祉は施しと結びついた「憐み」と考えられているということです。ゆえに、クーンレ教授は、東において社会保障プログラムは西よりも低いレベルから導入が進んだが、1985年~1995年の経済成長期においては福祉が拡大し、1997年の経済危機によって国家の福祉的責任は下降もしくは水準変更されたことを指摘しました。そして、現在の西と東に共通な福祉的課題とは、グローバル化(もしくは脱グローバル化?)による経済危機、人口の高齢化、国際人口移動、労働市場構造や家族構造の変化、社会的不平等であるが、福祉国家として十分に発達し、合意によるガバナンス形態をとる国家(北欧)には多少の利点があるものの、アジアもまた、受容力の高さを活かしてこの課題を乗り越えられるであろうと締めくくられました。

フロアからは、インドネシアや中国からの英語基準プログラムの院生による自国の将来に関する活発な質問が相次ぎました。クーンレ教授はそれらの質問に丁寧に回答され、従来の福祉国家論の枠組みを超えたグローバル化時代における西と東の知識共有の必要性を参加者全員が認識したところで閉会しました。

政策科学研究科では、欧米中心の理論枠組みから一旦距離をおいたうえで、アジアにおける諸政策を眺めることによって、新たなアジアの政策像を打ち出していくことに、近年力を入れています。今回のクーンレ教授の講演会はその過程としての国際比較の重要性を改めて認識させるものとなりました。

2016.10.19

研究科HPを更新しました

研究科HPを更新しました

2016.10.05

「資源循環と持続可能な環境戦略RP」オープンリサーチを開催しました

特別講演会「中国の「一帯一路」戦略と文化交流」―蔡建国 教授

7月27日に、立命館大学政策科学研究科「資源循環と持続可能な環境戦略RP」が大阪いばらきキャンパスにてオープンリサーチ「中国の一帯一路戦略と文化交流」特別講演会を開催しました。中国同済大学教授、アジア太平洋研究センター名誉所長、上海市人民政府参与である蔡建国先生を講演者としてお招きしました。

2013年、習近平国家主席は、「中国は平和的発展の道を歩み続け、発展の成果を共享し、互恵・win-winの解放・発展戦略を貫き、各国との友好交流を強化し、人類運命共同体を構築する」という発想のもとで、新たな外交戦略の一環として、「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」からなる「一帯一路」という構想を打ち出しました。

蔡先生はまず、「一帯一路」構想の概況と意義から解説し、同構想の最大の背景は、中国が一層の対外開放を契機とし、政策、施設、貿易、資金、民心のコネクティビティを経絡として、急速に発展する中国経済と沿線諸国の利益を結びつけ、中国の夢とユーラシアの夢、世界の夢とを共に織り成すよう力を尽くしてゆくことであると強調しました。「共に検討、共に建設、共に享受する原則」により、中国の独奏ではなく、沿線各国によるコーラスであることが重要であるとしました。同構想の沿線には、60数カ国があり、総人口は44億で、世界63%を占め、GDP総額は21兆ドル、世界の29%を占めます。更に、同構想では、経済協力のみならず、エネルギー・環境・食料など複数の分野においても、日中韓をはじめ、東アジアの地域協力が巨大なポテンシャルを持っていることが説明されました。

次に、蔡教授は文化の視点から「一帯一路」戦略を解説しました。古シルクロードは、世界の主要な文化の母胎であり、東西文明の架橋でありました。シルクロードの各地に現れた文化は、キャラバンによって東西各地に伝えられ、様々な文化変容を受けながらも、各地の文化を向上し促進させました。一方、「一帯一路」構想が世界の多極化、経済のグローバル化、文化の多様化、社会の情報化という流れに沿うものであり、開放的な地域協力理念をもって、グローバルな自由貿易体系と開放型世界経済の維持に取り組んでいますが、実は構想の最も重要な目的及び推進力は、各国の国民の間の文化交流を作り出すことであるという論点が出されました。そこで、近年、中国語ブーム(漢語熱)の背景の下、文化の多様化に応じて、文化交流及び多文化共存・共生・共栄を根底とした孔子学院の発展を例として説明しました。立命館大学政策科学部の周瑋生教授が初代学院長を務めた立命館孔子学院はその成功事例として挙げられました。

その後、蔡教授から文化は日中関係を結ぶ紐帯であり、文化の交流は両国国民の相互理解及び両国関係の発展に重要な役割を果たすべきであると話しました。更に、日中両国文化交流を振り返って、文化の交流が主に3つの段階に分けられるとし、すなわち、古代においては、主として日本が中国に学び、一方近代(明治維新以降)になると、中国が日本に多くの留学生を派遣し、様々な分野から日本を学び取った、しかし、現代においては、日中両国が相互勉強の時代に入っているとしました。「一帯一路」構想において、経済・エネルギー・環境・福祉分野などでの日中協力が促進でき、特に文化・人文の交流に大きな期待が寄せられます。また、日中文化交流において、在日華人・華僑及び留学生のネットワークが果たす役割を重視しなければならないことも指摘されました。

最後に、立命館大学政策科学研究科「資源循環と持続可能な環境戦略RP」に所属している院生が、エネルギーや環境、低炭素社会・食料などの視点から、各自の研究テーマを紹介しながら、研究の手法・現実的意義及び留学生の勉強生活について蔡教授と深く交流しました。

2016.10.05

政策科学研究科周研究室がソフトバンク(株)等と異分野講習会を開催

政策科学部は教育理念として、「広い視野をもって現代世界、現代社会の問題を理解し、これを解決できる人材を育成します」をあげています。そのためには、文理融合と理論実践両面のアプローチを用い、技術から社会システムまでを視野に入れ、政策システムの最適化と人間実践活動の科学化を目指す、異分野結集による超学際(Transdisciplinarity)的な研究と学問が求められます。政策科学研究科周研究室は、学生たちが研究している分野の壁を超え、多分野の社会問題に関心を持たせるために、この間、ソフトバンクグループとグランソール奈良医療グループによる異分野講習会を開催しました。

4月27日には、ソフトバンクグループの阿部 基成事業開発本部長と神田 直記人事本部副本部長等、7月4日にはグランソール奈良医療グループの辻村 勇取締役兼国際部長をOICキャンパスにそれぞれお迎えし、同社の事業領域、戦略計画、特に通信・イノベーション分野と医療経営分野について最新情報を紹介し、国際協力と社会イノベーションの視点から日中協力のポテンシャルなどを分析・検討しました。とりわけ、学生にとってはあまり知らない分野でもあり、講演者からは素人にもある程度理解できるように丁寧にプレゼンが行われ、新たな知識の勉強だけでなく、今後の院生自身の発表にも非常に参考となるものになりました。

ソフトバンクもグランソール奈良も異なる分野で事業を行っていますが、両社の共通点としては、国際的な連携を重視していることが挙げられます。まず、ミクロ的に言えば、時代の変化に敏感に適応し、地球環境と共存型のライフスタイルを創造・推進するための商品・サービスや社会システムなどを開発・提供する「イノベーション力」の力を持つことが重要であると捉え、マクロ的な視点では、現代企業は、国内だけでなく、グローバル視点で海外の事業展開、ひいては国際貢献をはかることが大切だとしています。これは、今の時代における競争で優位に立てるかどうか重要なポイントとなります。学生たちも今後の研究に常に批判的な発想力、創造性や新規性に富む分析力及びグローバル視点を持って問題を考えることの大切であることの意識を改めて深めることができました。また、ソフトバンクの自然エネルギー財団と周研究室が提唱している「東アジア低炭素共同体」構想に対する協力について意見交換も行われました。

本学習会は周研究室の伝統イベントとして、学生たちに構内で学外のことを勉強できるチャンスを提供しており、今後も引き続き行う予定です。

2016.07.04

韓国・国民大学校と日韓合同ワークショップを開催

韓国・ソウルより、国民大学校の社会科学大学国際地域学科の大学院生が3年ぶりに立命館大学政策科学研究科を訪問し、日韓両大学の大学院生がそれぞれの研究テーマについて報告するワークショップが6月23日に開催されました。

この合同ワークショップは、立命館大学政策科学研究科の2つのリサーチ・ユニット(Kクラス、Mクラス)の合同によるオープンリサーチです。

日韓の大学院生の研究報告のテーマは、両校の研究の多様性を反映して多岐にわたっています。日韓のパブリック・ディプロマシーの比較、地域振興のための文化資源の活用等、7人の報告に対して、国民大学校社会科学大学の日本学専攻の教員と立命館大学政策科学研究科の教員をまじえて討論がなされ、実り多い研究報告会となりました。

2016.06.27

文理融合を図る教育と研究を目指して政策科学部周研究室と理工学部専門ゼミナールとの合同ゼミナールを開催しました

2016年6月13日(月)に理工学部専門ゼミナールが政策科学部周研究室との合同ゼミナールの形で大阪いばらきキャンパスにて行われました。本合同ゼミナールは「学科の壁を超える学際性、及び文理融合的な教育と研究を目指し、自由に討論し、異なる視点やアプローチから新たな考えを生み出す」を主旨として行われたものです。

最初に、理工学部の中島淳教授から理工学部専門ゼミナールを紹介した上、今日の合同ゼミナールの主旨が説明されました。続いて政策科学部の周瑋生教授より「政策工学への誘い」を題にして理工学部の学生を対象に「認識科学」と「設計科学」の両面からミニ講義が行われました。

研究発表は二つのセッションに分けて行われました。第一セッションにおいては、理工学部専門ゼミナールに所属する18名の学生が、①ランチストリートで回収型弁当箱を使った効果の検証、②レシート、印刷用紙、レジ袋の使用削減をはかるための技術と政策提言、③LED電球の導入などによる構内エネルギー消費の削減方策、④キャンパス全面分煙を提唱するための意識調査など四つのグループに分け中間発表が行われました。各グループの発表後、教授と学生から多くの質問やアドバイスをもらい、政策科学部の学生にとっては、理工学的なアプローチを聴講でき参考になる有益な発表となりました。

第二セッションにおいては、政策科学部周研究室に所属している15名の院生から各自の研究内容が紹介されました。「日本の固定価格買取制度」、「福島原発事故前後の世論変化」、「気候変動問題における日中韓協力」、「中国の食料安全問題」、「計量生活満足度評価」、「低炭素技術特許ビックデータによる炭素削減ロードマップ構築」などについて発表されました。周研究室では、主にエネルギー環境分野を中心として、「時間」「空間」「政策」三つの軸に沿って研究を進めています。具体的には、経済発展と環境保全に資する様々な経済的社会的または技術的な対策を分析・評価し、公平性、効率性や地域特性を加味したエネルギー・環境政策を求め、持続可能な発展のための国際的な提言に結びつける研究を展開しています。発表者はそれぞれ最新の成果を行うとともに、理工学部の教員よりフィードバックを受けました。社系学生の論理組み立てなどは、たいへん参考になったとの感想もありました。
最後に、理工学部佐藤圭輔准教授から、多くの文理融合的なアドバイスを受けて、新たなステップに入っていこうと総括的なコメントを受けました。

2015.10.01

ディポネゴロ大学工学部4回生26名が研究科を訪問

2015年9月30日午前、インドネシアのディポネゴロ大学工学部建築学科4回生26名が、エドワード・パンデラキ博士、エルニ・セトヨワティ博士らの引率の下に政策科学研究科を訪問しました。吉田副学部長による立命館大学の概要説明や日本の都市政策に関するレクチャーを受け、留学生のOICでの体験談を熱心に聞いていました。在学大学院生3名や塩崎特別招聘教授らと交流しました。その後、キャンパス内を見学し、一行は京都市内の伝統建築の見学に向かいました。

在学大学院生の体験談を熱心に聞く学部生

OIC建物内を見学

2015.10.01

インドネシア・ディポネゴロ大学と学術交流協定の締結が行われました

ディポネゴロ大学は1957年に設立されたインドネシア国内有数の国立大学の1つで、主要なキャンパスはジャワ島中央北部のスマラン市(人口約200万人)にあります。ディポネゴロ大学の学部学生数は34000人を超えており、人数規模的には立命館大学とほぼ同規模です。かねてより交流のあった工学部ブルカ・ファジャール副学部長と工学部建築学科エドワード・パンデラキ学科長とが2014年11月18日立命館大学衣笠キャンパスを来訪し、鐘ヶ江政策科学研究科長と今後の学術交流について懇談を行いました。その後の2015年3月、本学政策科学部および政策科学研究科は大学院を含むディポネゴロ大学工学部と学術交流協定の締結を行いました。

懇談の後、記念品を交換するブルカ・ファジャール工学部副学部長と政策科学研究科長(2014年11月18日)

2015.01.29

日中関係学会主催の「第3回宮本賞(学生懸賞論文)」において、「大学院の部」の優秀賞を受賞しました

このたび、立命館大学政策科学研究科「資源循環と持続可能な環境戦略RP」周研究室に所属する博士後期課程2回生の王鳳陽さんが、日中関係学会主催の「第3回宮本賞(学生懸賞論文)」において、「大学院生の部」の優秀賞(最優秀賞該当者なし)を受賞しました。同賞を受賞した他の2名は東京大学大学院学際情報学府博士課程後期課程5回と同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程2回に在学する2人でした。

宮本会長と受賞者たちの記念写真
宮本会長と受賞者たちの記念写真

宮本会長と優秀賞受賞者王鳳陽さん
宮本会長と優秀賞受賞者王鳳陽さん

王鳳陽さんの論文は「食品安全協力の視点から日中関係の改善を考える」で、食品の安全を守る日中両国の協力体制から日中関係のあり方を考察し、今後の両国の協力体制の課題などにも言及しました。
日中関係学会は、1992年に発足した学術交流団体で、現在は、宮本雄二氏(元駐中国大使)が会長を務めています。学会の目的は「日中関係に係わる諸分野の研究・発表と人的交流を通じて日中の相互理解を促進すること」にあります。同学会では、「若い学生の皆さんが日中関係の懸け橋となることを期待」して2012年度から学会長の名前を冠した「宮本賞」(学生懸賞論文)を設けました。3回目となる今年度の賞には、29校(日本国内の大学16校、中国大陸の大学13校)から、「学部生の部」と「大学院生の部」を合わせて約50人(グループも含む)から応募がありました。

2014.12.01

リサーチプロジェクト「資源循環と持続可能な環境戦略」の院生が京都市農家見学会を実施

京都の北嵯峨及び嵯峨野地域では、広沢池と大沢池が人工的な形状を持ち、背景となる遍照寺山のなだらかな山景と一体化し,その周りに平坦に広がる農地をも合わせ,京の雅を代表する風景を今日まで伝えています。嵯峨野における大切な田園景観など歴史的原風景を保全するために、1969年に「古都保存法」の「歴史的風土特別保存地区」に指定されました。農業の持続経営、京野菜のブランド戦略などを学習するために、政策科学研究科周研究室が、10月15日に京都市右京区北嵯峨における長浜氏の農家を見学対象と選定し、農家見学会を企画。リサーチプロジェクト「資源循環と持続可能な環境戦略」の院生が参加しました。なお、この農家は、2007年4月に中国の温家宝総理が訪問したこともあります。

見学会では、20年以上の豊かな農業生産経営管理など経験を持っている長浜氏が自分の農場の生産基盤の整備、農産物の生産状況および生産管理の技術などについて詳しく紹介していただきました。

今回は参加者全員が農家の生産、作業などに対して高い関心を持って、農作物の虫害治理、土づくり、収穫時期、農薬、肥料に関する様々な質問を提出して、長浜さんおよび奥様二人が品目別の生産場所および各品名の野菜を紹介しながら、熱心に質問を応答、そして意見交換をしました。

長浜さんによる「歴史的風土特別保存地域」における農家生産経営特別政策についても紹介していただきました。優れた田園風景を保存するために、ビニールハウスなどの導入が禁止されていること、そして政府は買い上げた土地の所有権を持って、農家にレンタルの方法で土地を提供すること等が分かりました。
今回の見学の流れは、オクラと大根、四角豆の田地から、茄子、白菜、ほうれん草、トマト、枝豆の畑まで一周巡り、そしてイチジク、ゆずなど果物の果樹および椎茸の育場まで見学しました。見学の後は長浜さんのご家族と一緒に、温家宝総理のご招待による中国への旅行の記念写真や記念品などを拝見し、日中友好交流のことをもう一度思い出しました。

今回の見学会では、「農のある風景」を体験し、播種、育成、管理、収穫など農作物の成長や農家の人々の営みを記録し、そして実践的な農業知識を学習できました。長浜さんの農作物に関する詳しい紹介および政策科学研究科教授周瑋生先生の社会科学的な視点から捉えた問題と解釈を加え、院生たちとの活発なコミュニケーションを通して、知識面および研究視座が広がって、コミュニケーションを重視した実践的で有意義な見学会となりました。

2014.05.21

大型研究プロジェクト「里海の生態系サービスの経済評価」が始まります

 このたび、環境省の「平成26年度戦略的研究開発領域課題(S-13)」の一環で、「持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発」というプロジェクトがスタートします。全部で15のサブテーマがあり、このうち立命館大学・政策科学部では、「里海の生態系サービスの経済評価」というサブテーマで、仲上健一先生(政策科学部・特別任用教授)をリーダーとして、小幡教授、高尾教授、上原准教授、太田助教が研究を行っていきます。
今回はその概要について、仲上先生と太田先生(政策科学部・助教)に聞きましたので、みなさんにご紹介をさせて頂きます。

 

Q1:「里海の生態系サービスの経済評価」とありますが、どのような内容なのでしょうか、もう少し詳しく教えてください。

A1:はい。このテーマは、3つのステップを踏んでいきます。第1は、沿岸海域で行われてきた、様々な開発プロジェクトのレビューを行い、データベースにまとめていきます。そして現状の評価を加えることによって、これまで私たち人間が行ってきた活動に起因する沿岸域に与え続けてしまった負荷の計算をしていきます。「沿岸」とありますが、なにも海のそばの海岸線という意味に限定するわけではなく、海につながる河川の流域も対象に含まれます。またこの沿岸域を特に「里海」と称して、人と自然環境とのつながりを明確に意識したものとしています。人間は沿岸域の資源を様々な形で管理して利用してきました。この人と自然とが形作るシステムが里海といえます。

里海
里海

Q2:フィールドはどのようなものを想定しているのでしょうか?

A2:現時点では、日本国内の全47都道府県が対象ですが、そのなかでも、瀬戸内海・三陸沿岸・日本海沿岸の3エリアを重点的に取り扱っていくことを考えています。

Q3:「里海」ということばはあまり聞いたことがありません。どのようなものでしょうか?

A3:例えば環境省は、里海を「人の手が加わることにより、生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」と定義しています。「海だけ」・「陸地だけ」ではなく、その両者を一体のものとして扱うことで、生態系や物質循環の機能(ここでの物質とは、適正な栄養塩や水質など)をうまく維持していくことが可能となります。そのためには、海の水質改善だけではなく、森林の管理や、私たちが海産物(魚介類・藻類)などを消費していく(もちろんバランスを考えたうえで!)ことも大きく影響していきます。

里海
里海

Q4:なるほど、里海という言葉の奥深さが少しだけ見えた気がします。次のステップは?

A4:第2のステップは、生態系サービスの貨幣価値を算出します。ここでの「生態系サービス」とは、海域が私たちに与えてくれる恩恵の総称です。例えば、食品(魚介類など)の提供や、レジャースポットとしての恩恵などがわかりやすいかと思います。他には、気候調整や栄養循環等のサービスもあります。
 貨幣価値への換算にあたっては、「代替法」(そのサービスを別の商品や施設等に置き換える場合にかかる費用)、「ヘドニック法」(そのサービスに関連し、土地や賃金など特定の商品に反映される付加価値)、「CVM(仮想評価法)」(人々が付加価値を感じるかもしれないオプションの価値)などがあります。
 例えば先行研究の中には、瀬戸内海の水質改善により、1年当たり約1兆3,000億円の便益(私たちにとってメリットとなるもの)があり、それにかかる費用は約1兆5,000億円という試算結果を出しているもの(*)もあります。
*岡市友利・小森青児・中西弘編、「瀬戸内海の生物資源と環境」、1996、恒星社厚生閣

Q5:1兆円とはすごい金額ですね。他に特徴的な手法はあるのですか?

A5:評価手法としては、Costanza(コスタンザ)評価法というものも使います。これはロバート・コスタンザ氏を中心とした研究グループが1997年に発表した論文で用いた評価手法であり、17種類の生態系サービスの価値は、全世界で毎年、30兆ドルという試算結果を出しました。日本のGDP(2012年度、実質国内総生産額)はおよそ517兆円であり、1ドルを100円とすると、約5兆ドルということになります。これと比べても、その価値の大きさを感じてもらえるのではないかと思います。

Q6:第3のステップは?

A6:第3のステップでは、サステイナビリティ(持続可能性)という視点から、先に述べた3つのエリアで、自然環境価値・経済的価値・社会的価値の評価を行います。

研究会風景
研究会風景

Q7:サステイナビリティといいますが、どのようにして評価を行うのでしょうか?

A7:これまでサステイナビリティの評価手法が数多く提案されていますが、研究者及び政策決定者のコンセンサス(合意)が得られた、確立された手法はありません。一般的には様々な指標を用います。例えば「1人あたりのGDP」や「GDPあたりの石炭消費量」などがあります。少し変わったところでは、「保安林の面積」や「耕作面積」などというのもあります。本プロジェクトでは、こうした指標の選定から、複数の指標の統合方法、そして過去・現在・未来のダイナミックな変化を捉えた新しいサステイナビリティ評価手法を開発・適用します。

Q8:最後に、このテーマの到達点といいますか、目標を教えてください。

A8: 最終的には、違うテーマ(視点)で研究を行ってきた他の大学や研究機関とその成果を統合し、2050年の達成を目標にした「きれいで、豊かで、賑わいのある持続可能な沿岸海域実現」に必要な政策の提言を行います。これまで、沿岸海域に関心をもつ人々は漁業に携わる人々(漁民)が中心であったと思いますが、漁民が全人口に占める割合は0.2%にとどまっています。今後は残りの99.8%の人々にも沿岸海域に対する関心を持ってもらい、沿岸海域の単なる保全から一歩進んで、「持続可能な発展」に向けた取り組みの実現に貢献できればと考えます。

2014.01.06

12月24日「資源循環と持続可能な環境戦略RP」オープンリサーチを開催しました

「原子力発電について考えてみませんか?」--長野恒己氏

2011年東日本大震災により起きた福島第一原発事故で、日本のみならず世界中で反原発運動が高まっています。2013年末現在、日本国内にある全50基が停止しており、再稼働が未定の状況になっていますが、皆さん原子力発電どう考えていますか。2013年12月24日(火)に、立命館大学政策科学研究科「資源循環と持続可能な環境戦略RP」が立命館大学衣笠キャンパスにおいてオープンリサーチを開催しました。

研究会では、公益社団法人日本技術士会ながの技術士事務所の長野恒己先生に、専門家の視点から原子力発電について詳しく紹介して頂きました。長野先生は、大阪大学工学部卒後、三菱重工業神戸造船所で原子力プラント設計部次長、再処理(核燃料)プラント設計部部長を経て、三菱重工業子会社の旧神菱ハイテックで技術統括(原子力周辺設備、水処理施設など)取締役・顧問など、一貫して原子力プラント設備設計に従事されました。

今回は、エネルギー歴史、原子力年表、原発数、原子力発電の状況、放射線、新安全性基準などについて、詳細な事例やデータを基に、工学的視点のみならず、社会学的視点から丁寧に講義されました。原子力発電のメリットとデメリットを深く理解でき、また、放射線が外部に漏れないように、フィルター付きベントを設定するなどを通じて、原子力発電再稼働ための安全審査新規制基準についても紹介されました。

日本の現在の発電状況は、原発の代わりにコストが比較的高く環境負荷も高い化石燃料を使う火力発電に依存しており、原材料コスト増加に伴い電気料金も増加しています。最終的には企業経営や市民生活にも負担を強いることにつながることが説明されました。

本研究会では、原子力発電に対しての賛否双方の意見がありました。長野恒己先生の講義に、政策科学研究科教授周瑋生先生の解釈を加え、並びに院生たちとの活発なディスカッションを通して、エネルギー政策の3原則(経済性、安全性、環境性)、並びに時間軸、地域軸など多元的視点から、ベストミックス的な政策設計が求められ、これからは、単純な原子力発電の賛成または反対の二分法よりも、日本ひいては世界のエネルギー供給問題を考えながら、原子力発電の安全対策に力を入れ、理性的に考える必要があるという認識に至りました。今回のオープンリサーチは、研究の視座を広げるとても有意義な会となりました。
(政策科学研究科M1 林祥偉 筆)

2013.10.22

国民大学校・立命館大学両校の大学院生による日韓合同ワークショップが開催されました。

政策科学部が学部間交換留学協定を締結している韓国の国民大学校の社会科学大学国際地域学科の大学院生が立命館大学政策科学研究科を訪問し、日韓両大学の大学院生がそれぞれの研究テーマについて報告するワークショップが開催されました。


この合同ワークショップは、立命館大学政策科学研究科の2つのリサーチ・ユニット「グローバル化時代における地域圏の課題」「競争学の構築」の合同によるオープンリサーチです。

日韓の大学院生の研究報告のテーマは、外交問題から少年犯罪の歴史にまで及んでいます。5人の報告に対して、国民大学校社会科学大学の日本学専攻の教員と立命館大学政策科学研究科の教員をはじめ参加者から活発な質問が出されました。


政策科学研究科では複数教員による共同指導・研究が行われており、学際的なアプローチにより政策科学に接近してきました。このワークショップは、政策科学研究科の学際的特性を活かし、日韓の大学院生の研究について十分な討議ができ、実りある研究報告会となりました。


2013.06.20

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科との英語による共同ワークショップの開催

2013年6月1日(土)・6月2日(日)に今回で第10回目を迎えた、「Ritsumeikan-Keio  Joint Workshop」が、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにおいて、一般財団法人日本国際協力センター(JICE)の後援のもとで開催されました。この共同ワークショップは、同じ公共政策系の英語基準コースをもつ両研究科の院生が研究内容を報告し、議論を通じて、アジア政策学について考えるという趣旨のもと、2008年度より毎年2回のペースで行われています。今回は“Japan’s Policies, Asia’s Policies for the 21st Century”というテーマのもとで、タイ、ミャンマー、インドネシア、中国、日本からの17名の参加者がそれぞれ質疑応答を含めた15分間のプレゼンテーションを行いました。私は、初めての日本人参加者として研究発表に参加しました。

基調講演に関しては、星野俊也教授(大阪大学大学院国際公共政策研究科)による「安倍政権の日本外交と安全保障政策」という講演がなされました。星野教授は、地図を様々な角度から見ることで浮き彫りになる北東アジアの安全保障について語っておられたのが、印象的でした。直後には、Vesselin Popovski教授(国際連合大学サステナビリティと平和研究所)から基調講演を踏まえたコメントがなされ、現在の日本の安全保障の取り組みを深く知ることができました。

今回の共同ワークショップにおける研究発表は、各国地域に根付く問題からグローバルなイシューへの対応など、示唆に富んでいました。その中でも、住宅政策や農地改革、地域コミュニティの形成に関するものが数多く見られました。私はここで、「日本への軍用機オスプレイ配備の過程」について発表を行いました。私にとって、学外において英語で研究発表を行ったことは初めての経験で、準備から困難に直面しましたが、練習の甲斐があって、楽しんで本番を迎えることができました。私の発表は日本の安全保障についても述べており、幸いにも、星野教授からアドバイスをいただくことができました。

この共同ワークショップへの参加は、教授陣からのアドバイスや院生同士の交流によって、研究のモチベーションを高め、研究の課題を発見し、改善する機会となりました。とりわけ、発表の場において、アジアの異なる地域であっても同じような問題を抱えていることがわかりました。その際、発表者のテーマにより近い院生が質問や提案を行うことで、各人の問題解決の方法を共有することで、これまでとは異なる視点を研究にもたらすことにも繋がりました。私は、この共同ワークショップにおける研究発表や文化間交流を通じて、自分の大学院生活での「学び」をもっと充実させたいと考えるようになりました。

(執筆:立命館大学政策科学部 4回生 大学院進学プログラム受講生
Social Governance, Policy and Administration Unit所属 石丸亜希子)

2013.03.19

政策科学研究科ウェブページをリニューアルしました。

この度、政策科学研究科ウェブページをリニューアルしました。 今後とも宜しくお願いいたします。