立命館大学図書館

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萩原 正樹 先生(文学部)

 


『白川静著作集』
白川 静 著(平凡社 ; 1999-2000)

白川静先生の著作は難しい。学術的な著作はもちろん、一般向けに書かれた書物も難しい。でも学生の皆さんには、果敢にこの難しい書物達に挑戦してほしい。難しいからと言って敬遠していたのでは、いつまで経っても難しいままだ。90%分からなくても、10%が分かればそれで良い。また次に読んだらもっと分かるかもしれないのだから。著作集にはエッセイなども収められていて、それらは読みやすいだろう。特に第12巻「雑纂」に収録されている「蘆北先生遺事」は、立命館の学生必読である。

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『日本における中国文学 ; 1』
神田 喜一郎 著(二玄社 ; 1965)

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『日本における中国文学 ; 2』
神田 喜一郎 著(二玄社 ; 1967)

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日本において、中国文学の一ジャンルである詞が、どのように受容され、発展し、衰退したかを論じた名著。神田先生の著作はどれもその該博な知識に驚かされるが、本書にもその知識が縦横に披瀝されている。私も含めて、現在の研究者も本書を超える仕事をまだ成し遂げていない。


『猫談義 : 今と昔』
今村 与志雄 著(東方書店; 1986)

本書も、今村与志雄先生の広く深い知識をたっぷり楽しめる好著である。中国における猫からはじまり、少数民族やインド、エジプト、ヨーロッパの猫と人との関わりにまで及んでいて、世界の猫文学ガイドとしても利用できる。猫好きの人ならばぜひ読んで頂きたい。

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『王維』(小沢クラシックス「世界の詩」 ; . 中国名詩鑑賞 ; 2)
原田 憲雄 著(小沢書店、1996年)

原田憲雄先生の著作や訳注書は数多く、いずれもぜひ読んで頂きたいが、今回は『王維』を挙げた。本書は特に注釈が素晴らしい。たとえば「遊感化寺」詩に登場する「鹿女」という語には、それだけで小字で二頁にも及ぶ破格の注が附されている。私はこの注釈によって、『南史』に見える潘妃の「歩歩金蓮を生ず」の本当の意味を教えられた。

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『科挙の話 : 試験制度と文人官僚』(講談社学術文庫 ; 1426)
村上 哲見 著(講談社、2000年)

村上先生の著作もいろいろ挙げたいところであるが、今回は本書を選んだ。科挙とは中国で清代まで行われていた官吏登用試験であるが、その制度の詳細や、科挙によって引き起こされる明暗両様の問題を分かりやすく解説してくれる。大学入試が終わっても、人生において試験はまだまだつきまとうであろう。試験とは何かを考える上でもヒントとなる。

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『邪宗門 上・下』(河出文庫 ; た13-12~13)
高橋 和巳 著(河出書房新社、2014年)

私の高校時代には結構流行っていたが、最近の若い人はほとんど高橋和巳の小説は読まないのではないだろうか。本書は大本教の弾圧事件に材を採った小説であるが、人間や社会の深い業に気付かされるとともに、文学の面白さ、美しさを十分に味わわせてくれる。高橋和巳の評論やエッセイ、特に『文学の責任』(1967)もぜひ読んでほしい。

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『化粧』(講談社文芸文庫 ; なA2)
中上健次 著(講談社、1993年)

中上健次の小説は、学生時代に耽読した。『枯木灘』『千年の愉楽』など長編小説も良いが、中上文学を味わうためにまず短編集『化粧』をお勧めする(私も確かこれを最初に読んだような記憶がある)。その圧倒的な表現、土俗的なエロティシズムに打ちのめされ、中上の作品すべてを味わい尽くしたいという欲望に駆られるであろう。

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『高丘親王航海記』(文春文庫 ; し21-1)
澁澤 龍彦 著(文藝春秋、1990年)

澁澤龍彦は、本当の意味での文学者なのではないかと思う。性や怪奇、幻想、快楽など、文学の面白さを知り尽くした作家であり、評論家であった。彼には「自分は書いてあるものしか信じない」という信念があり、これこそ文学者の真骨頂だと思う。本書は日本の幻想文学の最高傑作の一つである。

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『雨の音 : 子母澤寛幕末維新小説集』(中公文庫 ; し15-13)
子母 澤寛 著(中央公論新社、2006年)

時代小説は人によってかなり好みの差がある。その作家の視点というか、どの立場から眼差しを向けているかによって好みが別れるのであろう。たとえば私は司馬遼太郎はあまり好きではない。だが子母澤寛は終始佐幕側の人間に寄り添い、滅び行く人々の哀歓を描く。その小説世界は限りなく美しい。

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『アジア主義 : その先の近代へ』
中島 岳志 著(潮出版社、2014年)

「アジア主義」については竹内好に「日本のアジア主義」という有名な論文があるが、本書は竹内論文を承けてさらに分かりやすく説いたもの。「アジア主義」という思想(あるいは生き方)があることを、ぜひ本書を通じて知ってほしい。ただやや誤植が多いのが残念。同じ著者の『血盟団事件』『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』もお勧め。

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『開国・維新 : 1853~1871』(中公文庫 ; S24-1 . 日本の近代 ; 1)
松本 健一 著(中央公論新社、2012年)

昨年11月に急逝した松本健一は、「伝説」シリーズや北一輝研究で知られる。ある観念に取り憑かれた男たちを描く『蓮田善明日本伝説』や『右翼・ナショナリズム伝説』もお勧めだが、「日本の近代」シリーズの一冊を選んだ。近代日本史講座ではあるが、歴史講座にありがちな単なる事実の羅列ではなく、それぞれの人の思いに密着しながら歴史を述べていて、複雑な幕末史も面白く読める。

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