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末近 浩太 先生(国際関係学部)

2019.04.01

「イスラーム」を軸とする現代中東政治研究

専門は現代中東政治、特に東アラブ地域のイスラーム主義運動・思想を研究しています。冷戦後の世界においてイスラーム主義運動は国際政治の主要なアクターの1つとなりましたが、その実態は十把一絡げに「イスラム原理主義」とされるなど、十分に把握されているとは言えません。さらに、9.11事件や「イラク戦争」、過激派組織「イスラーム国」の盛衰を経て、今や人々の関心は実態の把握(あるいは異文化の理解)よりも「彼ら彼女ら」をいかにコントロールするかという、古くて新しい問題にシフトし始めています。

こうしたなかで、アラビア語の原典読解と臨地調査を2つの柱に、「彼ら」の考え方や活動を紹介し、理解することに取り組んできました。地道な作業ですが、民主化や安全保障、天然資源の問題とおなじように大切なことだと考えています。これを手掛かりに、国際政治における「イスラーム」の意味と意義を今一度きちんと検討し、21世紀の国際社会のあり方を構想していきたいと思います。


『ヤシガラ椀の外へ』
ベネディクト ・ アンダーソン 著 ; 加藤 剛 訳 (NTT出版、2009年)

名著『想像の共同体』の著者による自伝的エッセイ・学問論。「地域研究(エリア・スタディーズ)」という学問・研究手法の意義と強みについて語ると同時に、大学の制度や母国といった「ヤシガラ椀」の外に飛び出すことを説いています。「萬国のカエル團結せよ!」

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『イスラム報道(増補版)』
エドワード ・ W ・ サイード 著 ; 浅井 信雄、 佐藤 成文、 岡 真理 訳 (みすず書房、2003年)

名著『オリエンタリズム』の著者による現代メディア論。西洋から見た東洋、広くは「異文化」へのまなざしに潜む(多くの場合、無意識の)偏見は、21世紀の今日にも色濃く残っているどころか、いっそう深刻なものになっています。なぜ、どのように、誰がそうした偏見を再生産しているのでしょうか。本書は、この問題に真正面から切り込んでいます

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『現代中東の国家・権力・政治』
ロジャー ・ オーウェン 著 ; 山尾 大、 溝渕 正季 訳(明石書店、2015年)

中東の政治を学びたいならば、まずこの一冊。長年にわたって欧米の大学・大学院で用いられてきた定評ある教科書の邦訳です。20世紀初頭のオスマン帝国の崩壊から21世紀までの中東の様子が、特に国家の成り立ちと変化を軸にして詳しく論じられており、この地域が抱えてきた諸問題、例えば、独裁、経済の停滞、宗教復興、超大国の介入などの背景が理解できます。

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『石油の呪い:国家の発展経路はいかに決定されるか』
マイケル ・ L ・ ロス 著 ; 松尾 昌樹、 浜中 新吾 訳(吉田書店、2017年)

中東といえば石油。石油は中東諸国を豊かにした一方で、民主化の停滞、家父長制の持続、内戦の発生、経済政策の失敗などの様々な諸問題を引き起こしてきました。しかし、実はこの「石油の呪い」には、中東だけではなく、中東以外の諸国も苦しめられています。だとすれば、中東は通俗的に考えられているほどヘンテコな地域ではなく、合理的に「理解する」ことが可能な地域ということになります。本書は、社会科学の計量分析を通して、このことを明らかにしています。

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『中東・イスラーム研究概説: 政治学・経済学・社会学・地域研究のテーマと理論』
私市 正年、 浜中 新吾、 横田 貴之 編著(明石書店、2017年)

本書は、そのタイトルの通り、今日の中東を理解するためのテーマや理論を網羅したハンドブックです。 例えば、独裁や紛争などの原因についてどのような説明があるのか(あり得るのか)、先行研究や積み残されている課題が細かいところまでカバーされています。中東の政治を勉強したいと思ったときに、どのようなテーマやトピックが面白いのか、有意義なのか。勉強に向けたとっかかりを得るのに最適な一冊です。

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『世界史の中のパレスチナ問題』
臼杵 陽 著 (講談社現代新書、2013年)

パレスチナ問題について勉強したいならば、まずこの一冊。誰と誰が対立しているのか、なぜ対立しているのか、なぜ対立が終わらないのか。こうした基本的な問いを、歴史を遡りながら丁寧に解きほぐしていきます。読み進めていくうちに、世の中にあふれている説明の多くが過度に単純化されたものであること、あるいは、そもそも誤ったものであることが分かるはずです。

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『現代イスラーム世界論』
小杉 泰 著(名古屋大学出版会,2006年)

イスラームは、歴史的には中東で誕生した宗教ですが、今日では世界の様々な地域に広がっています。本書は、そうした世界を「イスラーム世界」と呼び、その成立と展開の歴史を軸に、思想、政治、社会、経済の相互の関わりを明らかにしていきます。また、これを読むと、「地域研究(エリア・スタディーズ)」という学問・研究手法を肌で感じ取ることができると思います。

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『ムスリム女性に救援は必要か』
ライラ ・ アブー=ルゴド 著 ; 鳥山 純子、 嶺崎 寛子 訳(書肆心水、2018年)

「ムスリム女性は抑圧されている。だから、なんとかしてあげなくてはいけない。」こうしたよく見聞きする通俗的な語りがあります。これにはいくばくかの真実も含まれているかもしれませんが、そもそも「ムスリム女性」として十把一絡げにしてもよいのでしょうか。あるいは、抑圧の原因を単純に「イスラーム」に求めてよいのでしょうか。さらには、こうした語り自体が、非ムスリム(特に西洋諸国)に政治的に利用されていないでしょうか。本書は、中東やイスラームについての本と同時に、西洋諸国に対する社会批判の本でもあります。

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『宗教の系譜: キリスト教とイスラムにおける権力の根拠と訓練』
タラル ・ アサド 著 ; 中村 圭志 訳(岩波書店、2004年)

宗教とは何か。この問いに答えるために、特定の宗教の教義や儀礼を勉強することも大事ですが、そもそも私たちが用いてきた「宗教」という呼び方や理解の枠組みそのものを考え直してみる必要があるでしょう。本書は、私たちが今日当たり前のように用いている「宗教」が、実は特定の時空間のなかで形成されてきたことを浮き彫りにします。

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『機動戦士ガンダム THE ORIGIN(全24巻)』
安彦 良和 著(角川書店,2002-2015年)

もはや日本における古典、いや、常識となったアニメ「機動戦士ガンダム(1979年)」のコミカライズ版。様々な読み方があるかと思いますが、ここでは、善に見える側にも悪が、悪に見える側にも善がいるという、現実の世界におけるごく当たり前のことを再認識できる点を強調しておきます。中東やイスラームだけでなく、広くは「他国」や「異文化」を見る際に必要な姿勢を学ぶことができるのではないでしょうか。

当館所蔵無  (推薦のみ) 


『A Political Economy of the Middle East. Fourth Edition.』
Melani Cammett、 Ishac Diwan、 Alan Richards and John Waterbury 著 (Westview Press、2015年)

中東の政治経済(political economy)に関する概説書。英語圏の大学・大学院で用いられてきた定評ある教科書です。最新版は2015年刊行の第4版。中東の政治史、政治学や経済学の知識がないと少々難しいかも。大学院生向け。

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『The International Politics of the Middle East. Second Edition.』
Raymond Hinnebusch 著 (Manchester University Press、2015年)

中東の国際関係(international relations)に関する概説書。英語圏の大学・大学院で用いられてきた定評ある教科書。最新版は2015年刊行の第2版。

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