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林 松国 先生(経営学部)

 

今回のテーマ:中国の経済発展と企業競争力を理解するうえで役に立つ本

『中国経済発展論』
中兼和津次著(有斐閣、1999年)

本書では、開発経済学、比較経済体制論という視点から、新中国成立後の経済発展ならびにその移行過程を計量的成果もとりいれて多角的に概観した。中国経済の初期条件、開発戦略と政策、経済発展と構造変化、 成長と分配や安定性の追求、企業制度と企業改革といった視角から幅広く中国経済を学ぶことができるようになっている。中国経済を深く理解したい人のための必読の本格的なテキストである。

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『中国の経済発展と市場化 : 改革・開放時代の検証』
加藤弘之著(名古屋大学出版会、1997年)

1979年から始まった中国経済の「市場化」の特質とその到達点をどのように見るべきか。本書では、主に農村から都市への市場経済の浸透、および沿海から内陸への市場経済の波及という二つの側面から、計画経済から市場経済への移行過程を分析した。その結果、地元農村での労働力吸収から都市や他の農村地域への移動を伴う労働力吸収へと変化が生じたことや、地域を超えた財、生産要素の移動が活発し、地域間の相互依存が次第に増大しているなど特徴が明らかになった。社会主義経済の特徴とその構造上の矛盾を理解したい人に是非とも手に取ってほしい一冊である。

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『中国経済入門 : 世界の工場から世界の市場へ』
南亮進, 牧野文夫編(日本評論社、2005年)

本書では、まずそもそもなぜ改革開放が必要だったことや、社会主義市場経済とは何かといった中国経済に関する基礎知識を説明し、そのうえで、産業発展と企業改革、労働市場と金融・資本市場や、対外開放と国際関係について独自の視点で分析を行った。中国経済の全貌と現状を平易に解説した教科書である。

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『中国経済革命最終章 : 資本主義への試練』
関志雄著(日本経済新聞社 、2005年)

本書は、中国では民営企業が既に国有企業に取って代わって経済の主役になっていることや所得の二極分化が進んでいるという現状から、中国はもはや社会主義ではなく、「原始資本主義」の段階にあると大胆に主張した。本書の優れたところは、著者が幅広い調査の結果と経済学理論に基づいて、不均衡な発展や構造的な矛盾といった中国経済の「弱点」を鋭く分析したことであり、また国有企業と金融機関や、マクロ経済政策の改革に対しても著者独自の提案を行った。社会主義経済と資本主義経済の違いを深く考えさせる一冊でもある。

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『企業の成長と金融制度』
今井健一, 渡邉真理子著(名古屋大学出版会、2006年)

市場経済化、つまり計画経済から市場経済への転換とは生産、経済活動にかかわる資源配分メカニズムの 変質を意味する。このとき、経済のエンジンである企業は、その行動を転換させ、同時にそれをサポートするさまざま制度も変質する必要に迫られる。本書では、その転換のなかで、企業および金融部門に焦点をあてて、両部門がたどってきた過程について詳細に考察した。本書の優れたところは、企業と金融それぞれの部門についてミクロ的かつマクロ的な両方の視点から分析を行ったことと、両部門の相互関係についても独自の視点で分析を行ったことである。

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『経済の国際化』
大橋英夫著(名古屋大学出版会、2003年)

国内体制の改革と並んで、対外貿易と直接投資は中国に未曾有の経済成長という結果をもたらし、また市場化を推し進めた。本書では、対外開放と貿易体制の過程をふり返り、中国の対外貿易がより効率化されたことを統計分析に基づいて綿密に実証するとともに、資本輸入国から資本輸出国へと変貌を遂げ、WTO加盟によりグローバル経済に統合されつつある中国経済の実像を描き出した。

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『現代中国の産業 : 勃興する中国企業の強さと脆さ』
丸川知雄著(中公新書、2007年)

1990年代以降、家電や自動車をはじめとする多くの産業分野において、中国ローカル企業の存在感が急速に高まってきた。著者によれば、それを可能にした最も重要な原因は「垂直分裂」という産業構造の変化である。従来一つの企業のなかで垂直統合されていたいろいろな工程ないし機能が、複数の企業によって別々に担われるようになることを「垂直分裂」というが、1970年代までに形成された古い計画経済体制と90年代以降の世界の潮流とが不思議に合致し、さらに最終製品を手早く市場に投入してキャッチアップしようという中国企業の志向ともマッチしたことで、中国では垂直分裂が他国に例を見ないほど進展した。複数産業における「垂直分裂」の実態とそれをうまく利用した中国企業の戦略が著者の分析によって明らかになり、中国のような後発工業国の産業発展を理解するうえで是非お薦めしたい一冊である。

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『徹底検証中国企業の競争力 : 「世界の工場」のビジネスモデル』
安室憲一著(日本経済新聞社、2003年)

中国に関する研究はマクロ経済的な分析や産業論が中心だったのに対して、本書はもっぱら経営学の観点から中国企業の競争力を分析した。本書では、「ビジネスモデル分析」(ビジネスの仕組みの設計思想とそのデザイン)を用いて、ハイアールやTCLといった中国を代表する家電メーカーの経営実態と成長戦略を客観的に分析し、中国企業の持つ強みとその課題を明らかにした。中国企業のビジネスモデルの共通するパターンとその背景に関心ある方にお薦めの一冊である。

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『中国製造業のアーキテクチャ分析』
藤本隆宏, 新宅純二郎編著(東洋経済新報社、2005年)

アーキテクチャという聞き慣れない言葉は何か。著者によればアーキテクチャとは製品設計の基本的な考え方のことで、大きくインテグラル型(擦り合わせ型、例えば乗用車やゲームソフト)とモジュラー型(組み合わせ型、例えばパソコンや自転車)に分けられるが、このアーキテクチャの理論を用いて中国製造業を考察してみるのが本書の発想である。著者の分析によって、中国企業が生産シェアで大きな力を持つようになった背景には外資系企業のインテグラル部品をコピー・改造し、そのコピー・改造し部品をあたかも汎用部品のように扱い、新製品を安いコストで素早く開発するという実態が明らかになった。産業分類の分析方法ではなかなか見えてこない中国製造業の共通の強さと限界性について説得力のある結論を提示した良著である。

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『現代中国の民営中小企業』
関満博編(新評論、2006年)

中国では、中小企業は全企業数の99%以上を占める4200万社を数え、GDPの60%、納税額の50%を占めるとされる。本書では、著者は長年の調査に基づき、中国中小企業の発展を代表する五つの地域、北京、大連、無錫、温州と広東を取り上げ、「担い手」、「市場」、「産業集積」の三つに注目して、中国中小企業の発展の基本特徴とその意味をわかりやすく分析した。豊富な事例研究を交えながら活力の溢れた中小企業生の発展の姿をとらえた好著である。

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