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小久保 みどり 先生(経営学部)

2017.10.06

「フクシマ」後の世界を生きていく希望と手がかりを与えてくれる本

世界中を震撼させた福島第一原発事故。私自身、日本で原発事故が起こるとは想像もしていませんでした。東日本に人が住めなくなるという事態さえ十分ありえましたが、それが回避できたのは、多くの方々の命がけの奮闘のおかげもありましたが、なによりも不幸中の幸運だったとしかいいようがありません。原発に警告を発していた人はたくさんいたのに、安心しきっていたおのが不明を恥じるばかりです。国家や大会社、利害関係のある専門家などの巧妙な宣伝に踊らされないためにも、真実を冷静に見極める目を養いたいものです。そして、希望と勇気を持って生きぬいていきましょう。そのための本をおすすめします。ちなみに私は、福島第一原発事故を契機として、緊急事態に対応する組織についての研究を始めました。


『原発事故はなぜくりかえすのか』
高木 仁三郎 著 (岩波新書 2000年)

市民科学者として原発に警鐘を鳴らし続けた著者の遺言ともいうべき本。原発業界の非常識さを、深い学識と豊かな経験から冷静にわかりやすく説明しています。原発事故の11年前に出版されていたのに、著者の警告は生かされず、福島第一原発事故は起こってしまったのです。

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『原発と大津波:警告を葬った人々』
添田 孝史 著(岩波書店 2014年)

福島第一原発事故を引き起こした大津波は、実は想定外ではありませんでした。東電も保安院も知っていたのです。それでいて、対策を先送りしていたのです。そのことを独自の取材と各種の資料から丁寧に解き明かしています。福島第一原発事故は防げたはずなのです! 津波を低く見積もることに利用された(あるいは加担した)学会もあり、なさけないかぎりです。専門家の責任についても考えさせられます。

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『カウントダウン・メルトダウン』上・下
船橋 洋一 著(文藝春秋 2012年)

福島第一原発事故時の官邸、東電本店、現場である福島第一原発、米軍、自衛隊、被災地、文科省など、いろいろな場所で起こっていたことを描き出し、事故の進行と対策の一部始終を重層的に活写している本。原発事故当時、各所で何が行われたのかがよくわかります。
世界中を震撼させた福島第一原発事故。私自身、日本で原発事故が起こるとは想像もしていませんでした。東日本に人が住めなくなるという事態さえ十分ありえましたが、それが回避できたのは、多くの方々の命がけの奮闘のおかげもありましたが、なによりも不幸中の幸運だったとしかいいようがありません。原発に警告を発していた人はたくさんいたのに、安心しきっていたおのが不明を恥じるばかりです。国家や大会社、利害関係のある専門家などの巧妙な宣伝に踊らされないためにも、真実を冷静に見極める目を養いたいものです。そして、希望と勇気を持って生きぬいていきましょう。そのための本をおすすめします。ちなみに私は、福島第一原発事故を契機として、緊急事態に対応する組織についての研究を始めました。

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『新版 原子力の社会史:その日本的展開』
吉岡 斉 著(朝日新聞出版 2011年)

原子力が日本でどのように展開されていったのかを、第二次世界大戦前から詳しく説明している本です。特に原発に関しては、どのように推進されていったのか、原発をめぐる官庁間の主導権争い、原発で起こった幾多の事故を電力会社が隠蔽してきた歴史など、網羅的に理解できます。

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『失敗の本質:日本軍の組織論的研究』
戸部 良一 ほか 著(中公文庫 1991年)

第二次世界大戦における日本軍の代表的な戦い(いずれも大負けの戦い)の事実経過を説明して、日本軍には組織としてどのような問題があったのかを分析した本です。
これらの戦いでは、無謀な作戦により、多くの兵士や市民が亡くなりました。しかし、その作戦をたて、指揮をした人達の多くは生き延び、反省もしていないようです。その無謀な作戦の責任の所在があいまいだったりするのです。合理的な思考よりも精神論が優先されたり、情報を軽視したり、不利な状況を国民には隠したり、と福島第一原発事故に関する状況と似ています。戦争で大きな犠牲を払ったのに、そこから十分に学んだと言えるのでしょうか。今回の原発事故からは学ばなくては。

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『永山則夫:封印された鑑定記録』
堀川 惠子 著(岩波書店 2013年)

永山則夫は19才で4人を射殺し、死刑になった人物です。裁判のために、彼の精神鑑定が行われましたが、実際に使われることはありませんでした。著者はその鑑定記録を入手し、彼の生い立ちを克明に追い、なぜ彼がこのような罪を犯したのかに迫っています。そして、なぜ鑑定記録は使われなかったのか、さらに、精神鑑定を担当した有能な精神科医はその後どうなったのか、についても明らかにしています。社会と人間の関わりについて深く考えさせられる本です。最後の最後で大泣きしてしまいました。

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『まなざしの地獄:尽きなく生きることの社会学』
見田 宗介 著(河出書房新社 2008年)

19才で4人を射殺して死刑になった永山則夫が、なぜそのような犯罪を行ってしまったのかを、当時の一見関係のないようなデータからあざやかに解き明かしています。そこには鋭い洞察力とともに、虐げられた人々に対する想像力と共感があります。研究とはこうありたいものです。

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『現代社会の理論:情報化・消費化社会の現在と未来』
見田 宗介 著(岩波新書 1996年)

現代社会を情報化、消費化という視点で、幾多の理論を使って切り込んでいる本です。アメリカの自動車業界で圧倒的なシェアを誇っていたフォードがGMにぬかれたという、経営学部の学生なら誰でも知っている経営史における有名な出来事も、ロラン・バルトの理論を使って明快に説明しています。現代社会についての理解を深めることができるとともに、論理展開の仕方も学ぶことができると思います。

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『時間と自己』
木村 敏 著(中央新書 1982年)

私は、大学を卒業した直後に民間会社に就職しました。職場には同じような年齢の同僚がたくさんいて、仕事の合間におすすめの本を紹介しあっていました。これは、そのころ後輩に勧められた本の中の一冊です。読んで衝撃を受けました。おもしろい。
木村敏氏は、著名な精神医学者であり、その豊富な臨床治療の経験から、統合失調症、躁鬱病、離人症、てんかん、それぞれの病によって時間のとらえ方が違うことを発見しました。病の特徴と時間のとらえ方は密接に関わりがあるのです。特にてんかん患者の発作と時間についての記述には驚きました。大学院に行きたい、と思うきっかけを与えてくれた一冊。

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『組織行動研究』
坂下 昭宣 著(白桃書房 1985年)

組織行動を研究しようと志している学生には必読の書。文献レビュー、仮説の構築、質問紙調査を設計して実施、データを統計分析して結果をだし、考察して、大きな理論へと統合する。組織行動とはこのように研究していくのだ、というまさにお手本。大学院前期課程の学生におすすめします。

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『原因をさぐる統計学:共分散構造分析入門』
豊田 秀樹 ・ 前田 忠彦 ・ 柳井 晴夫 著(講談社ブルーバックス 1992年)

数学、算数が苦手な人でもわかるように、数字をあまり使わずに、身近なことを例にして、あくまでもやさしく因果関係をさぐる統計学の手法を説明しています。学生にとって、統計学を修得することは、一つの武器を獲得するようなもので、非常に有用です。統計学を知らない人は、まず、この本から初めてみてはいかが。

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『犠牲 (サクリファイス):わが息子・脳死の11日』
柳田 邦男 著(文春文庫 1999年)

自殺を図った著者の息子は、脳死状態となりました。体は暖かいし、心臓も動いています。脳死とは死なのでしょうか。自分の身内の死-二人称の死-と、三人称の死の場合の脳死というものの明らかな違い。脳死となった息子が心停止の死を迎えるまでの11日間の著者の心の揺れ、苦悩と思考の深化。生と死、脳死と臓器移植に関わる諸問題について考えさせられます。

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『少女たちの魔女狩り:マサチューセッツの冤罪事件』
マリオン ・ L ・ スターキー / 市場 泰男 訳 著(平凡社 1994年)

魔女狩りというと、昔々、ヨーロッパで行われていたと思っていましたが、これはアメリカで実際に起こった話です。
集団ヒステリー状態に陥った思春期の少女たちが口走ったことから、魔女狩りが行われます。それにより、これまでキリスト教の教えを守って、つつましく生きてきた人々が裁判にかけられ、魔女とされてしまいます。現在の目からみれば、その裁判の審理はばかばかしいかぎりなのですが、魔女の存在を信じているとそんな無理な論理が通ってしまいます。そして、その騒動がおさまった後には、………。人間の愚かさとそして崇高さに涙がとまらなくなってしまいます。

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『白痴』 改版 上・下
ドストエーフスキイ / 米川 正夫 訳(岩波文庫 1994年)

無垢な魂を持つロシアの若き公爵のお話。その主人公よりもヒロインともいうべきナスターシャのエキセントリックで誇り高く、潔い生き方に感銘を受けました。
ちなみに、昔、まだ若かった板東玉三郎が小さな劇場での二人芝居で公爵とナスターシャの二役を演じるのを見ました。そのナスターシャのこの世のものとも思えない美しさと気高くあでやかな仕草に魅了されました。

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『外套』(『外套 ・鼻』より)
ゴーゴリ / 平井 肇 訳(岩波文庫 2006年)

この世界の片隅で、日々黙々と一生懸命生きている働き者達。働く喜びとは、プロの仕事とは、考えさせられる短編です。

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『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』
カート ・ ヴォネガット ・ ジュニア / 浅倉 久志 訳(早川書房 1982年)

電話がかかってきたならいつでも助けに行く大富豪のローズウォーターさん。私が社会にでて数年たって、キャリアを変えようか、これからどうやって生きていこうか、悩んだ時期に慰めと励ましをもらった小説です。

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『母なる夜』
カート ・ ヴォネガット ・ ジュニア / 飛田 茂雄 訳 著(ハヤカワ文庫 2013年)

主人公はアメリカ人でありながら、第二次世界大戦中、ナチスに協力して対米宣伝放送を行っていました。しかし、実はアメリカのスパイだったのです。戦後、アメリカのスパイだったということを証明してくれる人がいなくなり、ナチスに加担した罪でイスラエルの裁判にかけられてしまう、といった内容の小説。とにかく、興味深い。

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『存在の耐えられない軽さ』
ミラン ・ クンデラ / 千野 栄一 訳(集英社文庫 1998年)

まだ共産主義政権だった頃のチェコスロバキアに暮らす外科医と女性達の関わりを描いた小説。後半、共産主義政権下で生きる息苦しさ、希望のなさが、胸に迫ります。このような生活があった、あるいは現在もどこかである、などと考えてみて下さい。先頃(2017年6月~7月)、映画館で公開されていたポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の遺作「残像」もあわせて観ると、東ヨーロッパ共産主義政権時の抑圧の状況がリアルに感じられると思います。

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