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RBSセミナー・シンポジウム等

第15回RBSセミナー「起業家エコシステムとスタートアップ支援」

日時
2021年10月10日(日) 14:00~16:50
場所
立命館大学OIC 立命館いばらきフューチャープラザ3階コロキウム
ハイブリッド(会場+オンライン)
ゲスト講師

琴坂 将広氏 慶應義塾大学総合政策学部准教授

アピリッツ取締役、五常・アンド・カンパニー取締役、ユーザベース取締役、ユーグレナ取締役、ラクスル取締役

ゲスト講師

水野 成容氏 京都リサーチパーク㈱ 参与

京都リサーチパーク㈱ 常務取締役

コーディネーター
立命館大学大学院経営管理研究科 
肥塚 浩 経営管理研究科長・教授

レポート

2021年10月10日(日)に第15回RBSセミナーを会場とオンラインのハイブリッド方式にて開催しました。

テーマは「起業家エコシステムとスタートアップ支援」です。
ビジネスを創造するリーダーを養成することが本研究科の人材育成目的であり、このことは日本のビジネス社会においてもたいそう重要な課題であると考えています。今回はビジネスを創造する取り組みのうち、起業家に焦点をあて、起業家がより多く輩出されていくビジネス環境はどのようなものなのか、サイエンスパークにおけるスタートアップ環境の仕組みはどのようなものなのかについて、最新の理論と実践を踏まえた視点と論点を提供することとしました。

琴坂将広氏

最初の講演は、慶應義塾大学総合政策学部准教授の琴坂将広氏より、「新興企業の事業創造:優れた起業家はどのように事業を成長させているか」をテーマにお話されました。まず、過去30年のICTスタートアップエコシステムの成長は、1999年以前、新興市場設立からサブプライム問題前後、スマートフォンの普及からSNSの時代を経て、現在は第4段階にあることを示され、現在はコロナ禍の影響があるもののスタートアップ投資が堅調であることを指摘されました。また、スタートアップ企業のなかには多くの企業と連携して巨大な研究開発に挑む企業(ユーグレナ)やいわゆるボーングローバル企業として急成長する企業(五常・アンド・カンパニー)の紹介がなされました。次に、優れた若手経営者がどのように事業構想を練ったのか、成功する事業構想の原点とは何か、成長する事業構想の要は何か、その事業のKFSは何か、起業家は生まれながらに起業家かといった論点に対して、多くの若手経営者の考え方と行動を紹介されました。最後に、エコシステムの牽引をもたらした諸要因を、資金調達と金融市場、労働市場からの採用、エコシステム上のネットワークに分けて整理して示され、『STARTUP』(琴坂共著、2020年)で描いた成功の原則を明らかにされました。

水野成容氏

続いて、京都リサーチパーク(KRP)参与の水野成容氏より、「サイエンスパークとスタートアップエコシステム」をテーマにお話しされました。まず、KRPの概要を紹介され、それが全国初の民間運営による都市型リサーチパークであること、多数の産業支援機関の集積があること、多様な約500の入居企業があり、約6、400名の従業員が働く場所となっていることなどが紹介されました。次に、スタートアップエコシステムについて、シリコンバレーを参考に京都式エコシステムを提言してきたこと、内閣府のスタートアップエコシステム拠点都市に大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアムとして選定されたことが紹介されました。そして、香港をはじめとする海外のサイエンスパークを紹介しつつ、イノベーション・ディストリクト(ID)が重要であることを指摘されました。IDは都市の中心部に立地し、複数の交通手段でアクセスが容易であること、オープン構造であること、住・労・遊が混在し、知識労働者にとって魅力的な場であること、コミュニティ構築とネットワーキングが必須であり、サイエンスパークは地域産業振興拠点からIDにおけるスタートアップエコシステムのハブへ移行していくこと等が指摘されました。

講演に続いて、パネルディスカッションを肥塚浩コーディネーターの進行で行いました。具体的には、①優れた起業家にとって、日本の起業家エコシステムをどのように活かしているのか、それとも起業家エコシステムがどうであろうと関係なく成功をおさめているのか、②日本の起業家エコシステム/スタートアップ支援が、起業の成功をもたらす上で重要なポイントが何であると考えているか、③サイエンスパーク/イノベーション・ディストリクトから見て、京都や他の都市の可能性や課題をどのように見ているのか、海外で注目すべき都市/地域はどこかを巡って、議論を行いました。そこでは、東京と京都の起業および起業家の特性や、エコシステムおよびスタートアップ支援の共通点と相違について興味深いやり取りが行われました。また、起業家エコシステムにとって、都市が有する魅力が重要であること、すなわち、起業家のみならずスタートアップ企業で働く人々にとって、住環境、働く環境、遊んだり交流したりする場所としての都市のありようはとても大切であり、起業家エコシステムにとっても少なくない意味があるのではないかという議論を行いました。その後、会場からの質問に回答いただき、セミナーは終了しました。