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劉慶紅教授が日本経営倫理学会主催、第一回『水谷雅一賞』を受賞しました

立命館大学稲盛経営哲学センター研究員であり、立命館大学経営学部の教授である劉慶紅教授の著書『利他と責任~稲盛和夫経営倫理思想研究』(2020年3月出 版、千倉書房)が、2021年6月19日に、日本経営倫理学会主催、第一回『水谷雅一賞』を受賞しました。

第一回『水谷雅一賞』記念楯/千倉書房、2020年3月、ISBN: 9784805110901 第一回『水谷雅一賞』記念楯 / 千倉書房、2020年3月、ISBN: 9784805110901

『利他と責任~稲盛和夫経営倫理思想研究』は、京セラや第二電電(現KDDI)などの創業者・稲盛和夫氏の経営倫理思想を、劉慶紅教授が学際的なアプローチにより経済・経営・哲学の領域を横断的に分析した稲盛経営哲学に関する研究成果である。本書の研究成果は三つの意義があると考えている。

第一に、稲盛和夫の経営哲学に関する研究の多くは経営管理学の観点から企業組織構造、企業文化などの研究を行うものが多く、哲学倫理の観点から研究を行ったものは少ない。そこで本書は、稲盛和夫の関連著作について主に哲学倫理の視点から考察を行い、哲学倫理思想体系として整理している。

また第二に、理論の実用的な応用という観点で本研究は価値を持っている。稲盛和夫は西洋の企業と積極的に交流し、西洋の企業経営および倫理思想にも精通しているが、彼は盲目的にそれらを転用するのではなく、自らの日本文化を出発点にして、自らの企業の発展に最も適した経営倫理思想を見つけ出した。つまり稲盛和夫の経営哲学は、日本と西洋の二つの経営倫理思想において類似点を見つけながらも、その相違点を探ることで両者の経営的倫理の境界を認識し、相互に長所を取り入れ短所を補っていることを明らかにした。

また、西洋の先進的な管理方式および経営理念は、自らの発展に適した経営思想と経営モデルを求める企業によって多く研究されているが、自らの伝統文化を出発点に自らの経営管理に合致させた実証分析の事例は少ない。そのため本書の第三の意義は、稲盛和夫の経営哲学が特に東洋文化に根差した地域における企業に対して理論的および実践的な価値をもつという面にあると言える。

今回の受賞に関して、劉慶紅教授は、「ポストコロナ時代における経済では、どのように正しい経営哲学を確立し、企業経営の実践を図り、人間と自然、経済と社会の中長期的発展および人と社会の調和共生をいかに促進させるのか、さらにグローバルな競争に対して、どのように自分自身の文化的、経済的な背景をもって対応していくのかといった点が非常に重要になると考えており、その扉は稲盛和夫の経営倫理思想への深い探求と思考によって開かれると考えている。」と受賞の感想を熱く語っている。今後も、劉慶紅教授は稲盛経営哲学の研究展開を図るため、学際的な視座に基づき稲盛和夫の経営倫理思想体系を整理することで、抽象度の高い「経営倫理」という概念そのものや具体的な企業活動における実践フェーズまで、経営活動の川上から川下まで垣根を超えた研究の深化を図っていく。


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