数の問題の前に考えたい

#035
経済学部 授業担当講師由井 秀樹[写真右]
衣笠総合研究機構 客員研究員吉田 一史美[写真左]

 現在、政府は少子化対策に力を入れています。しかし、そこで前提にされるのは、どんな親子、家族の形でしょうか。たとえば、少子化対策の一環として、の費用負担をする制度があるのですが、対象は法律婚夫婦に限られます。これは、事実婚夫婦などが支援のみからされていることを意味します。

 一方、すでに生まれた子どものにかかわる問題もあります。日本では、親が養育できないために保護を必要とする子どもは現在4万人にのぼります。そうした子どもを家庭に迎えるは年間数百件にとどまっています。日本と対照的な米国では、養子縁組の数も多く、人種、障がい、国籍を問わず養子が迎えられています。家族をつくり、子どもを育てることは、もっと多様でひらかれた営みであってよいはずです。

 少子化対策として、妊娠・出産・子育てへの支援が行われています。しかし、「人の数を増やす」という目的で、妊娠・出産・子育てを語ることに疑問を呈する研究者も少なくありません。もちろん、各種の支援は大切ですが、それはあくまでも、「今を生きる人」の幸せのために行われるべきものではないでしょうか。

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