現在、政府は少子化対策に力を入れています。しかし、そこで前提にされるのは、どんな親子、家族の形でしょうか。たとえば、少子化対策の一環として、不妊治療の費用負担を軽減する制度があるのですが、対象は法律婚夫婦に限られます。これは、事実婚夫婦などが支援の枠組みから排除されていることを意味します。
一方、すでに生まれた子どもの養育にかかわる問題もあります。日本では、親が養育できないために保護を必要とする子どもは現在4万人にのぼります。そうした子どもを家庭に迎える特別養子縁組は年間数百件にとどまっています。日本と対照的な米国では、養子縁組の数も多く、人種、障がい、国籍を問わず養子が迎えられています。家族をつくり、子どもを育てることは、もっと多様でひらかれた営みであってよいはずです。
少子化対策として、妊娠・出産・子育てへの支援が行われています。しかし、「人の数を増やす」という目的で、妊娠・出産・子育てを語ることに疑問を呈する研究者も少なくありません。もちろん、各種の支援は大切ですが、それはあくまでも、「今を生きる人」の幸せのために行われるべきものではないでしょうか。