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スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程3回生の易東さんが、同研究科教授 橋本健志先生、博士課程前期課程修了生 杉本岳史さん、博士課程前期課程2回生 松村哲平さんおよび大阪工業大学工学部の研究チームとの共同研究により、共同で取り組まれた研究論文が、2023年9月21日に「Nutrients」へ原著論文として掲載されました。

 スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程3回生の易東さんが、同研究科教授 橋本健志先生、博士課程前期課程修了生 杉本岳史さん、博士課程前期課程2回生 松村哲平さんおよび大阪工業大学工学部の研究チームとの共同研究により、共同で取り組まれた研究論文「Investigating the Combined Effects of Mechanical Stress and Nutrition on Muscle Hypertrophic Signals Using Contractile 3D-Engineered Muscle (3D-EM)」が、2023年9月21日に「Nutrients」へ原著論文として掲載されました。


 高齢化社会に突入してから半世紀を超える現在、日本は新生児率の低迷に伴い「超高齢社会」に進んできました。加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)やそれに伴う運動器疾患などは、医療費の負担の増大のみならず、生活の質(QOL)を低下させることが問題となっています。そのため、いかに健康寿命を延伸するかが今後重要な課題であり、サルコペニアのような疾患の予防や健康維持のため、日々の栄養摂取と適切な運動を意識することが重要です。
 以前、私たちの研究グループでは、標高4000mほどの南米ペルーに植生するアブラナ科の多年生植物であるマカの筋肥大効果を新規に確認し、そのメカニズムを解明しました。その課題の進展として、マカと運動の併用効果を検証する新たな課題に取り組みました。一般的に細胞レベルで確認された知見の生体応用を実験動物を用いて検討することが知られていますが、最近では動物愛護の観点から、米国環境保護庁が哺乳類の実験使用中止を要望しています。そうした倫理的観点から、本研究は実験動物の代わりに、平面培養筋細胞より生体骨格筋組織の機能・構造に類似した三次元培養筋細胞『以下3D-Engineered Muscle (3D-EM)』を用いて、マカ(栄養)と運動を模倣する電気刺激 (機械的ストレス) の組み合わせが、骨格筋肥大を効果的に促すか、そのメカニズムを含めて明らかにすることを目的としました。
 その結果、機械的ストレスと栄養(マカ)の併用によって、筋収縮タンパク質であるミオシンタンパク質(重鎖)の発現量が有意に増加しました。また、ミオシン重鎖にはfastタイプとslowタイプが存在しますが、その両方が増加していました。特に、加齢やサルコペニアではfastタイプの筋線維の萎縮が顕著であるため、機械的ストレスと栄養(マカ)の併用は、サルコペニア予防に有効である可能性が示されました。
 さらに、今回、3D-EMをプラットフォームとして、運動(筋収縮)と栄養の併用効果を世界に先駆けて検証しました。更なる改良は必要ですが、動物実験の代替モデルとして、3D-EMをプラットフォームとすることの有意性についても明らかとなりました。
0927_論文掲載

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