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センター長からのメッセージ

 立命館大学SRセンター長の朝倉清高でございます。皆様のおかげをもちまして、立命館大学SRセンターは、今年で設立30年目を迎えます。立命館大学にSRセンターが設立されたのは、びわこ・くさつ(BKC)キャンパスに理工学部が移転して2年目にあたる1996年と伺っております。

 個人的な思い出で恐縮ですが、1995年3月頃、当時SRセンター長であった岩崎博先生にお声がけいただき、住友重機械工業(住重)の田無工場で講演する機会がありました。その際、工場内に設置されていた放射光装置「オーロラ」を初めて拝見しました。そしてその装置がこれから立命館大学に移設される予定であることをお聞きしました。そのあまりの小型さに驚くとともに、本当に研究に十分な放射光が得られるのだろうか、という率直な印象を抱いたことを今でも覚えております。それから時を経て、私は一昨年(2024年)にセンター長として当センターに赴任いたしました。開発当時の文献を学び、実機を詳細に拝見するなかで、このオーロラが、住重の当時の技術の粋を結集し、「世界最小の放射光施設」を目指して開発されたことを知りました。情熱と創意工夫の末、単一の磁石で放射光を発生させるという究極的とも言える設計に到達し、軌道直径わずか1メートルという超小型放射光施設を実現したのです。このような放射光源は、現在に至るまでオーロラ以外に実現例がないことも知り、深い感銘を受けました。

 この超小型放射光施設は、設立から30年以上が経過した現在もなお、軟X線からテンダーX線領域において強力な光を生み出し、大学や企業の多くのユーザーに利用され続けています。その成果は、数多くの論文や学会発表へと結実してきました。また、当センターは設立以来、文部科学省や通商産業省などのさまざまなプロジェクトに参画してきました。特に、2009年から2025年にかけては、NEDOプロジェクト「革新型蓄電池高度解析技術開発事業(RISING)」の分散拠点として採択され、軟X線XAFSを用いた蓄電池材料解析手法の高度化に取り組んできました。こうした歩みを振り返り、30年前に私自身が抱いた感想が、いかに不見識であったかを痛感しております。

 2024年からは、同じエネルギー領域をカバーする第4世代光源「NanoTerasu(ナノテラス)」の運用も開始されましたが、当SRセンターでは利用者が大きく減少した印象はなく、引き続き多くの方に活用されています。随時公募を行い、「使いたいときに放射光が利用できる」という小回りの利く運用体制が、当センターの大きな特長であり、これが使いやすい施設として評価いただいている理由の一つであると考えております。

 また、立命館大学の附置研究施設として、学生教育にも積極的に活用されていることも特徴です。学部3回生の学生実験という正規カリキュラムで放射光を体験できる環境が整っています。付属高校の生徒にも利用体験していただいています。

 加えて、過去30年間に当SRセンターで取得された多種多様なXAFSスペクトルを、データベースとして公開しております。特に軟X線領域のデータは、NIMSのMaterials Data Repository(MDR)にも収載され、国際統合XAFSデータベース(IXDB)にも登録されています。

 現在、SRセンターではXAFSやPESなどの分光ビームライン10本が稼働しています。さらにESCA装置も加わり、これからも皆さんにご利用いただけるように努めていきます。

 一方で、30年という年月は放射光光源としての一般的な寿命を大きく超えており、近年はさまざまなトラブルにも直面してきました。その都度、センター内部のスタッフの尽力と、住重からのサポートにより対応し、現在の活動レベルを維持しております。今後は、皆様のさらなるご支援を賜りながら、SRセンターの光源更新にも取り組んでいきたいと考えております。引き続き、立命館大学SRセンターへのご理解とご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(2026年4月)

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放射光とは

放射光とは、高いエネルギーを持って光に近い速度になった電子の進む軌道が電磁石の力で曲げられたときに、その接線上に放射される強い光(電磁波)のことです。

放射光の特徴

放射光は、1億分の1センチメートルというような原子や分子の世界をはっきりと見ることのできる、まっすぐに進む(指向性の強い)明るい(輝度の高い)光です。その性質を利用して次のようなことができます。

  • 放射光を物質に当てると光と物質がお互いに作用しあって光が散乱や回折をおこしたり、光のエネルギーが吸収されて、そこから新しい光(蛍光)や電子が発生したりします。(これはできることではなく現象論)
  • 輝度が高い(明るい)ので極微量の物質でも細かいところまで詳しく観測することができます。
  • 光は全波長(エネルギー)範囲にわたってとぎれなく連続しているので、物質の原子や分子レベルの構造や、電子(原子)状態を調べることができます。

どんな研究に利用できるのか

  • 物理・化学・生物といった基礎科学から、金属やセラミックス等の材料分野、機械、電子、バイオ技術、医療などの幅広い分野での応用が期待できます。
  • 物質表面の原子の並び方や、その3次元構造がわかってくることで、今までとは違ったまったく新しい機能を持った材料をつくることができます。

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立命館大学SRセンターの放射光

光源点から約3 mの距離で光の利用が可能

光源が非常に小さく、また装置自身が放射線を遮断する構造であるため、光源点から約3 mという極めて接近した距離で、光の利用が可能です。このため、試料位置で高い光子密度を得ることができます。

軟X線領域で光子密度が最大

赤外線からX線までの連続波長を持つ放射光。SRセンターの光源が発生する放射光は波長が約1.5 nm(Photon Energyでは約840 eV)で光子密度が最大になるため、特に軟X線領域での利用について有効となります。

電子ビームの高い安定性

単体の超伝導磁石を用いた真円型軌道の蓄積リングのため、電子ビームの安定性が非常に良いという特長を持っています。電子ビームサイズは、通常運転モードで縦方向140 μmの偏平な電子ビームです。またスモールサイズビームモードでは、縦方向のビームサイズが10 μmとなります。

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SR光源の主要パラメーター


蓄積エネルギー
Operating electron energy
575 MeV
ビーム電流
Electron beam current
300 mA
臨界波長
Critical wave length emitted X-rays
1.5 nm
ビーム寿命
Electron beam lifetime
200 minutes (※)
磁場強度
Bending magnetic field
3.8 T
軌道直径
Orbit diameter
1.0 m
RF周波数
RF frequency
190.86 MHz
ハーモニック(バンチ)数
Harmonic number
2
入射エネルギー
Injection energy
150 MeV
ビームサイズ (σ)
Typical beam size
水平方向 Horizonal: 1.3 mm
垂直方向 Vertical: 0.14 mm
放射光利用可能ポート数
Number of beam ports
14
周長
Circumference
3.14 m

※ 光源内部に赤外用ミラーを設置したため、従来値より減少しております。

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