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センター長からのメッセージ

 立命館大学SRセンター長に 2024年4月1日より就任しました朝倉清高です。小島センター長からバトンを受け、SR センターのますますの発展に微力ながら努めて行きたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 皆様のおかげをもちまして、当SRセンターは、2026年に設立30年目を迎えます。これまで、諸先輩方のご尽力と皆様方のご協力により光源故障、感染症拡大などの困難を乗り越え、今日に至っているとお聞きしており、今後もどうか引き続き、ご支援とご利用をよろしくお願いします。

 さて、立命館大学にSRセンターが設立されましたのは、びわこ・くさつ(BKC)キャンパスに理工学部が移転して2年目の1996年でございます。「新キャンパスの目玉となる最先端施設を導入する」という目的で、住友重機工業鰍ゥらAURORAと呼ばれる超小型電子蓄積リングを光源とした放射光加速器を購入いたしました。注目すべきことは、これがすべて同窓会の寄付によって賄われたということであります。当時、全国共同利用施設として、フォトン・ファクトリー(PF)、UVSORはございましたが、SPring-8もまだ完成しておりませんでした。したがって、我が国では私立大学附置の初めての施設であり、現在でも、私学唯一の放射光施設であります。1996年1月には運転を開始し、4月からは学内外のユーザーによる利用実験を開始いたしました。また、産業界の方々にも利用していただいております。

 立命館大学所属の施設でありますので、学内の教員の研究に利用されるだけでなく、学生の教育にも活発に利用されており、特長ある学部教育の一環として、学部3回生の学生実験等のカリキュラムにも組み込まれております。

 これまでの大きな成果として挙げられますのは、2002年にSRセンターに関連した二つのプロジェクトが21世紀COEに採択されたことであります。また、2009年度から2015年度まで、NEDOプロジェクト「革新型蓄電池高度解析技術開発事業RISING」分散拠点に採択され、軟X線XAFSを用いた蓄電池材料解析手法の高度化に取り組んできました。この後継事業として、2016年度から2020年度まで、RISING2に採択され、SRセンターでは高度な電池材料解析に鋭意取り組んできました。2021年度からは、さらに後継事業であるRISING3(電気自動車用革新型蓄電池開発事業)に採択となり、現在に至っております。

 一方、2002年、文部科学省ナノテク支援事業に採択され、SPring-8と共に、企業を中心にした外部ユーザーに利用公開されることとなりました。その後、後継事業でありますナノプラットフォーム事業、さらに、2010年度から2015年度まで共用促進プラットフォーム事業の参画機関として、補助金を得て外部の成果公開利用の支援をしてまいりました。2016年度から2020年度まで、光ビームプラットフォーム事業として、文部科学省からの補助はなくなりましたが、立命館大学の補助により、引き続き、成果公開型利用として、学術利用・産業利用の外部利用に対して支援を行っております。なお、この間、当SRセンターにおいて得られました多種のXAFSスペクトルをデータベース(https://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/src/sx_xafs_db/)として、公開をしております。とくに軟X線領域のスペクトルは充実しており、NIMSのMDRにも取り入れられています。

 現在、SRセンターでは12本のビームラインが稼働しております。その内訳は、XAFS, PESなど分光ビームライン10本、軟X線顕微鏡ビームライン1本、赤外顕微鏡ビームライン1本でございます。さらに、ESCA装置も加わりました。当SRセンターは赤外から硬X線までの放射光を利用できる小回りのきく施設であることが大きな特長でありますことから、改めまして皆様の活発なご利用を何卒よろしくお願い申し上げます。

着任間もなく、いろいろと勉強することが多いと思いますが、どうか皆様からの温かいご指導ご鞭撻をいただけますようどうぞよろしくお願いします。

(2024年4月)

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放射光とは

放射光とは、高いエネルギーを持って光に近い速度になった電子の進む軌道が電磁石の力で曲げられたときに、その接線上に放射される強い光(電磁波)のことです。

放射光の特徴

放射光は、1億分の1センチメートルというような原子や分子の世界をはっきりと見ることのできる、まっすぐに進む(指向性の強い)明るい(輝度の高い)光です。その性質を利用して次のようなことができます。

  • 放射光を物質に当てると光と物質がお互いに作用しあって光が散乱や回折をおこしたり、光のエネルギーが吸収されて、そこから新しい光(蛍光)や電子が発生したりします。(これはできることではなく現象論)
  • 輝度が高い(明るい)ので極微量の物質でも細かいところまで詳しく観測することができます。
  • 光は全波長(エネルギー)範囲にわたってとぎれなく連続しているので、物質の原子や分子レベルの構造や、電子(原子)状態を調べることができます。

どんな研究に利用できるのか

  • 物理・化学・生物といった基礎科学から、金属やセラミックス等の材料分野、機械、電子、バイオ技術、医療などの幅広い分野での応用が期待できます。
  • 物質表面の原子の並び方や、その3次元構造がわかってくることで、今までとは違ったまったく新しい機能を持った材料をつくることができます。

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立命館大学SRセンターの放射光

光源点から約3 mの距離で光の利用が可能

光源が非常に小さく、また装置自身が放射線を遮断する構造であるため、光源点から約3 mという極めて接近した距離で、光の利用が可能です。このため、試料位置で高い光子密度を得ることができます。

軟X線領域で光子密度が最大

赤外線からX線までの連続波長を持つ放射光。SRセンターの光源が発生する放射光は波長が約1.5 nm(Photon Energyでは約840 eV)で光子密度が最大になるため、特に軟X線領域での利用について有効となります。

電子ビームの高い安定性

単体の超伝導磁石を用いた真円型軌道の蓄積リングのため、電子ビームの安定性が非常に良いという特長を持っています。電子ビームサイズは、通常運転モードで縦方向140 μmの偏平な電子ビームです。またスモールサイズビームモードでは、縦方向のビームサイズが10 μmとなります。

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SR光源の主要パラメーター


蓄積エネルギー
Operating electron energy
575 MeV
ビーム電流
Electron beam current
300 mA
臨界波長
Critical wave length emitted X-rays
1.5 nm
ビーム寿命
Electron beam lifetime
200 minutes (※)
磁場強度
Bending magnetic field
3.8 T
軌道直径
Orbit diameter
1.0 m
RF周波数
RF frequency
190.86 MHz
ハーモニック(バンチ)数
Harmonic number
2
入射エネルギー
Injection energy
150 MeV
ビームサイズ (σ)
Typical beam size
水平方向 Horizonal: 1.3 mm
垂直方向 Vertical: 0.14 mm
放射光利用可能ポート数
Number of beam ports
14
周長
Circumference
3.14 m

※ 光源内部に赤外用ミラーを設置したため、従来値より減少しております。

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