ニュース
ゲスト講義実施報告 2026春 「戦略的デザインマネジメント論」
- 2026年9月
- 学生生活・活動報告
2026年7月8日、株式会社令三社 代表取締役/Haier RenDanHeYi Japan Research Center リサーチセンター責任者である山田 裕嗣氏を研究科授業「戦略的デザインマネジメント論」にてゲストとしてお迎えしました。

Haierの経営モデル「人単合一」は、「人(起業家としての従業員)」と「単(ユーザーにとっての価値)」を「合一」させる思想であり、①全従業員を起業家として扱う、②顧客との距離をゼロにする、③組織全体をエコシステムとして捉える、という三点を核とします。約13万人の組織を4,000社超の「マイクロ・エンタープライズ」に再編し、販売・修理店からバックオフィスに至るまでが独立した事業体として自ら顧客と価値を見いだす、緩やかな生態系が紹介されました。効率を目的とする京セラのアメーバ経営とは異なり、イノベーションを目的とする点に特徴があります。
対話は、本授業で扱ってきた「相互触発」「応答」という視点から展開しました。顧客とのゼロ距離とは、作り手とユーザーが互いのアスピレーションを開き、応答し続ける関係ではないか、という問いです。山田氏からは、統一された正解があるのではなく各事業体が自ら貢献を見いだしており、そのふるまいはむしろ町の家電店のような「オーナーとしての当事者性」に近いことが語られました。短期的な期待への追従に陥らない理由としては、ゼロ距離を「家族」や「子どもへのギフト」のメタファーで捉え直す視点が示されました。議論は「会社」というレイヤーが担う意味の問い直しへと広がり、速さを競う社会のなかで「立ち止まる(判断を留保する)」ことをいかに組織へ組み込むかという「立ち止まる組織」の探求へ接続されて締めくくられました。
受講生には「講義内容への引っかかりの言語化⇒自分の文脈との接続⇒山田氏への問い⇒現時点の仮説」という枠組みでレポートを課しました。大学職員、広告代理店、ホテル本部、スタートアップ、地方の個人飲食店、少人数の経営者など立場は大きく異なりますが、いずれも人単合一を自らの現場に引きつけて検討していました。自組織への転用可能性を吟味する反応、リスクの個人化ではないかとモデルを批判的に相対化する反応、ゼロ距離・休符・美意識といった鍵概念を用いて自らの仮説を組み立てる反応が見られ、概念が知識としてではなく思考の枠組みとして定着していることがうかがえました。
単一の成功事例を学ぶのではなく、それを鏡として各自の組織観を問い直し、自らの言葉で仮説へと編み直す――本授業が目指す学びが立ち上がった回となりました。