2005年4月2日 (第2722回)

平安京の自然景観

文学部教授 高橋 学

 京都を訪れる人々は、何をみて京都に平安時代の都を感じるのだろうか?何人かの人にたずねてみた。

 ある人は、東寺の五重塔であり、ある人は清水の舞台だったり、さらにある人は京町家だったりする。碁盤目状の街路や京都御所をあげる人もいた。京都に住んでいる人すらそう思っている人は少なくないようだ。

 しかし、ちょっと待って欲しい。現在残っている東寺の五重塔は、徳川家光の時代のものだ。清水の舞台しかりである。京町家にいたっては、さらにそれよりずいぶん新しい。せいぜい、100 年ちょっとしか経っていない。碁盤目状の街路だって、豊臣秀吉の時代以降にずいぶん変えられている。現在の京都御所だって、平安京のそれではない。

 かつての平安京の範囲に残っている一番古い建物は、千本釈迦堂。鎌倉時代のものである。奈良には、たしかに奈良時代の建物などが残っている。それは、奈良が都でなくなったからである。

 基本的に、明治の初めまで都であり続けた京都は、常に変化してきた。もう一度、素直に京都を見直してみよう。きっと、そこには新たな発見があるはずだ。