2005年7月9日 (第2734回)

汚職問題と人間の安全保障

大学院法務研究科(法科大学院)教授 生田 勝義

 米ソ対立を軸にした「東西冷戦」が終結するとともに、「腐敗」問題(corruption)に対する発達した資本主義国による対応が変化したといわれる。

 すなわち一方で、発展途上国への経済援助がその高級官僚や大物政治家への賄賂に食われていることを知りながら、戦略的理由からそれに頬かむりをしてきたのを改め、経済援助の透明性や説明可能性を積極的に要求し始めた。

 他方で、発達した資本主義国内部についても政治権力、さらには経済権力の腐敗に大胆にメスを入れ始めたというわけである。

 これらの取組みは、OECDなどの国際機関を舞台として国際協定などによって進められてきた。これらは情報化に支えられ急速に進展している「グローバリゼイション」の必要に応えるものであるが、政治権力や経済権力の腐敗をなくすことは、人間の安全保障にとっても重要な課題である。

 腐敗への挑戦のあり方を日本における汚職問題への取組みから教訓を得つつ、考えてみたい。