2008年11月15日 (第2876回)

明治維新と文化遺産をめぐる環境

京都市歴史資料館 歴史調査員 小林 丈広

 日本を代表する文化財のひとつであり、京都の象徴ともなっている清水寺。

 この清水寺が明治維新をどのように迎え、その後の時代の変化をどのようにかいくぐったのか。幕末の政争、廃仏毀釈、領地の収公など度重なる苦難は、明治維新期の寺院に共通するものでした。その歩みを振り返る中で、古代からある名刹が維新をどのように乗り越え、現代に生き残ったかを考えます。

 近代社会に清水寺が生き残るためには、宗教施設であるだけでなく、観光施設であり、文化財であることが、大きな意味を持ちました。おそらく、文化財は、文化財であるだけでは生き残ることはできず、さまざまな要素をあわせもつことで、人々から必要とされるのでしょう。清水寺の歩みは、日本社会の縮図ともいえ、その中から、近代仏教の歩み、文化財の歩み、観光の歩み、京都の歩み、さらには日本社会の歩みを考えるための手がかりを得たいと思います。