2009年6月27日 (第2901回)

インドネシア、ジャワ島中部の世界遺産観光と土産物売り

大阪学院大学国際学部 教授 瀬川 真平

 いわゆる発展途上国では、観光が経済開発の重要な分野に位置づけられている。また、観光はしばしば国民統合のための文化政策の一端を担っている。

 ところで、ユネスコによる「世界遺産」の活動は、普遍的な価値をもつ人類共通の財産を破壊や消滅から守り、保護保全し受け継いでいこうとする国際的な取り組みである。2008年8月現在、140カ国の878件が登録されている。

 世界遺産に登録された建造物や自然景観は、全人類が共有すべき財産という大義とは別に、個々の遺産の所在地や所在国にとっては有力な観光の資源または商品になりうる。ツーリストの側でも、世界遺産を訪ねる観光はますます盛んになっている。

 インドネシアには現在7件の世界遺産がある。なかでも、ジャワ島にある10世紀前後の建造とされるボロブドゥールやプランバナンの寺院跡は、日本でもよく知られている。その壮大さや精緻さにひかれて、各国から大勢のツーリストが訪れる。

 これら二つの世界遺産の場では、他の発展途上国の観光地でも見られるような零細な土産物売りと出会う。そこでは、海外から来たツーリストと土産物売りの間にさまざまな接触とすれ違いが見られる。