2010年3月13日 (第2929回)

消費税率引上げの問題点

法学部 准教授 望月 爾

 昨夏の政権交代に伴い、与党と政府に税制調査会を置いていた従来の体制が見直され、新たな政府税制調査会に一元化され、 政治家が中心となって公開の場で税制改正の内容を決めるなど、税制についての政策決定の過程が大きく変わりました。 平成21 年12 月22 日に閣議決定された「平成22 年度税制改正大綱~納税者主権の確立に向けて~」は、「公平・中立・納得」を基本とした税制改革の方針を明らかにするとともに、 各税目についての中長期的な改革の方向性を示しています。そのなかで、消費税については、今回の政権担当期間中の税率引上げは行わないとの方針の下、社会保障制度の抜本的改革などと併せ、 使途の明確化、逆進性対策なども含め検討することとされています。

 消費税は導入から20年以上を経過しましたが、逆進性や益税問題など依然問題点も少なくありません。 また、一般にはシンプルな税制と思われがちですが、実務上は大変複雑な税制といえます。 今回の講座では、税率引き上げの議論とともに、そうした消費税の現状と問題点について考えてみたいと思います。

聴講者の感想

 私は、現在の日本の現状や将来のことを考えると、消費税の増税が最も、やむを得ない選択であると考えていました。

 しかし、本日の講座を聞いて、自分が思っていたよりも消費税は複雑なものであり、制度を知るだけでなく、 滞納者の問題や、外国の制度でも、軽減税率やゼロ税率の問題をふまえて考えると、 単純に増税しやすいなどという理由などで税率を引上げることは、大変危険であると思いました。

 やはり、一番大切なのは消費税の制度を知るだけでなく、現状や、憲法に基づき、社会保障などの背景に対しても、 私達が知るということが大切であると思い、一人一人が意見を持ち、この問題を考えるべきであり、 私もこれから税法ゼミで学ぶにあたって取り組むべき問題であると思い、とても貴重な経験になりました。