2011年8月27日 (第2988回)

大震災とアスベスト問題

立命館大学政策科学部 教授 石原 一彦

 アスベストは、日本においては、段階的に使用が制限され、2006年に全面禁止に至りました。しかし建築物などに大量のアスベストがストックされています。これらのアスベストが適正に管理され、解体時に除去され、廃棄される必要があります。とりわけ、大震災等の災害時には、建築物が倒壊し、使われているアスベストが飛散する恐れがあります。実際、阪神・淡路大震災の際は、アスベストに対する危険性の認知度が低く、市民や解体業者も非常に無防備な状態でした。阪神・淡路大震災では、解体にかかわった建設労働関係者から、早くも2名の方がアスベストを原因とする悪性胸膜中皮腫を発症し、すでに死亡されています。また、東日本大震災被災地域においても、吹き付けアスベストが使用されている建築物が確認されており、適切な管理、解体を行わないといけません。災害時におけるアスベスト被害を防止する対策を徹底するとともに、ノン・アスベスト社会の構築に向けて、建築物等にストックされたアスベストの着実な除去、廃棄が求められます。

聴講者の感想

 泉南のアスベスト判決の前に、NHKのローカルニュースで、被害者の様子が取り上げられていましたので、関心を持って判決を見ていました。本日のお話で3点の問題が指摘されており納得できるものです。

 研究プロジェクトで「提言」「勧告」など積極的な活動を展開されていることを知りました。個人としては「平常時における対策」を重点的に広く一般市民が関心を持つことが重要と感じました。行政への働きかけも大切ですが、市民がアスベスト問題を理解する今月のテーマはまさに時期にかなったものでした。