2011年10月22日 (第2996回)

『水滸伝』の誕生

京都府立大学文学部 教授 小松 謙

 『水滸伝』は、いわゆる「四大奇書」の筆頭として、中国はもとより、日本でも江戸時代以来深く親しまれてきました。物語は、北宋末期(十二世紀初)、宋江を頭領とする百八人の豪傑が梁山泊というところに集まって、義賊として腐敗した政府に反抗するというものです。

 北宋末期に宋江を頭領とする盗賊集団があったことは、まぎれもない歴史的事実ですが、その詳細は全く不明です。元の時代には、宋江と梁山泊の豪傑を主人公とした演劇がたくさん作られていますが、その内容は『水滸伝』とはほとんど一致しません。

 多くの盗賊集団の中で、なぜ宋江たちの物語だけが重要視され、どのようにして発展していったのでしょうか。なぜ元の演劇と『水滸伝』は、同じ題材を扱いながら、全く違う物語になっているのでしょうか。そして、なぜ『水滸伝』は、反体制的な物語であるにもかかわらず、知識人を含む多くの人々に熱狂的に受け入れられたのでしょうか。これらの問いを追究していく過程で、さまざまなものが見えてきます。

聴講者の感想

  本日は興味深いテーマの変化球的な内容の講義で、別の意味で面白く聞かせていただきました。ありがとうございます。 時代を経て残っているものは、それなりの理由があるのだということが再認識されました。風評に惑わされずに、 自分で判断し、取捨選択すべきであることは、本当に重要であろうと思います。