2011年10月15日 (第2995回)

『西遊記』の成立と展開

首都大学東京大学院人文科学研究科 准教授 佐々木 睦

 唐代に三蔵法師玄奘がインドへの取経の旅を成し遂げます。これは7世紀の前半のことですが、この旅をモデルにした物語が、16世紀の終わり、明代に『西遊記』という長編小説にまとめられ、大人気を博します。けれどもそれ以前にも講談やお芝居の『西遊記』が作られており、ストーリーや登場人物はいま私たちが読んでいる『西遊記』とはちょっと違ったものだったようです。ほかに各地に残る壁画や浮き彫りなどの図像資料からも、小説『西遊記』誕生以前に様々なバージョンの「西遊記物語」があったことがうかがえます。『西遊記』成立以後も多くの翻案や続編が生み出されました。孫悟空が他の小説にゲスト出演したり、その娘が活躍したり。猪八戒が留学したり、はたまたマフィアの一味になったり、日本版『西遊記』では沙悟浄がカッパになったり、三蔵法師を女性が演じたり、そのパターンは実に様々。現在でも『西遊記』に材を得た作品は陸続と生み出されています。本講座では『西遊記』成立までの経緯と、その後の展開について、多くのバージョンの『西遊記』を鑑賞しつつ整理し、『西遊記』がなぜかくも多くのバージョンを生んできたかの謎にも迫ってみたいと思います。

聴講者の感想

 本講座を聞いて、『西遊記』の誕生のルーツをよく理解できました。 各人物の日本での受容・変遷の過程がとても興味深かったです。 日本人がここまで『西遊記』に興味を持って、追求したことに感心しています。 中国人が学ぶべきところでもあり、古典文化を大事にしたいです