2011年12月10日 (第2999回)
ギリシャ危機とユーロの行方
立命館大学国際関係学部 教授 星野 郁
日本でヨーロッパのことが関心を集めるのは、歴史や文化、芸術、最近ではサッカーが中心ですが、昨年以来「ギリシャ危機」に端を発したユーロの危機が、日本でも頻繁に紹介され、注目を集めるようになっています。その背景には、今回の危機が、第2のリーマン・ショックのきっかけとなって、ヨーロッパに留まらず、日本も含め世界経済に深刻な打撃をもたらす可能性があるからです。今回のユーロの危機に関しては、ギリシャが財政赤字の数値をごまかしてユーロに参加したことや、ユーロへの参加の後も放漫な財政政策の運営を続け、さらにはEUやIMFの支援にもかかわらず、一向に財政赤字を減らせないことに主要な原因があるとされています。けれども、果たしてギリシャだけが悪いのでしょうか。私は、問題はギリシャだけでなく、ユーロの構造やガバナンスそのものに大きな欠陥があったと思っています。今回の講座では、そもそもユーロの成り立ちから、ユーロ導入以降のヨーロッパ経済の展開を踏まえて、今回の危機発生の原因についてお話しする予定です。併せて、10月末に打ち出された危機対策の概要と、今後のユーロ並びにギリシャ危機の見通しについても、お話ししたいと思っています。
聴講者の感想
財政危機に陥っているギリシャの救済に、EU各国が総力を挙げて事に当たっている熱意は尊いが、状況は必ずしも順調に推移していない。本日はこの間の経緯と今後の見通しを詳述されたが、問題はユーロ制定段階での不備に起因しているようで、早期の解決を願うばかりである。だが、EU圏の理念とギリシャの立場がマッチしない限り進展は得難く、世界恐慌の回避に向け規模を拡げたグローバルな対応が喫緊であろう。