2012年10月20日 (第3034回)
ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読む
立命館大学名誉教授 井上 純一
ドイツのハイデルベルク市に「哲学者の道Philosophenweg」という散策道があります。京都の「哲学の道」は、哲学者西田幾太郎などが思索を巡らして散策したことから、後に言われるようになったようですが、「哲学者の道」の方は、ドイツ最古の大学であるハイデルベルク大学の学生達が、この道を折にふれ散策したことと、哲学が必須科目であったことからこの名前になったと言われます。 この大学で学生時代を過ごしたマックス・ヴェーバーは、ハイデルベルク大学の教授職をわずか数年(1896~1903)で病のため辞することになりますが、この講座でとりあげる記念碑的論文「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1904/05)をここで書きあげました。学生時代も含めてきっと彼もまた「哲学者の道」を散策し、彼の思想の底流をなす「西欧資本主義という名の近代」への思索を次第に深めていったことでしょう。 古典を読むとは、先人の優れた思索を読みほぐし、その人の「思索の道」を現代に生かすことだとすれば、ヴェーバーが「近代」「資本主義」で何を考えたか、日本でどう読まれたか、そして私達の今はどうか、をこの書に沿いながら考えてみたいと思います。