2012年10月27日 (第3035回)
ポラニー『大転換』を読む
立命館大学国際関係学部 教授 山下 範久
カール・ポランニーの著作は近年、反グローバリズムの古典として注目されてきました。日本でも意欲的に再評価の作業を進める若い世代の研究者が現れてきており、未公刊のノート類の翻訳や包括的な解説書も出てきました。また金融危機や環境問題、不安定雇用問題といった現代社会の問題に対して、ポランニー思想の先見性を認める研究は枚挙にいとまがありません。私自身もその流れのなかで現代世界の帝国化について、拙いながら一書をものしました。 こうした再評価の定着によって、主著の『大転換』は、広く知られた本となりましたが、実のところ同書はかなり難解な作品で、その知名度とは裏腹に、きちんと読まれることの少ない作品でもあります。今回の講座では、近年のポランニー研究の進展も踏まえ、『大転換』読解の急所を解説しつつ、その現代的意義についてお話しするつもりです。彼の議論の政治的・哲学的含意に分け入り、単なる市場原理主義批判ではないポランニー像をお伝えしたいと思います。