2012年11月10日 (第3036回)
エリクソンの人生と『老年期』
立命館大学生存学研究センター 特別招聘教授 やまだようこ
エリクソンの著書は、彼が歩んだ人生と深くむすびついています。彼を有名にした「アイデンティティ」ということばも、実の父がわからず、アメリカに移住して名前も変え、居場所も転々とした彼が、自分自身の連続性を終生探し求めた人生をうつしだしています。
今回は、エリクソンの晩年の著書『老年期』、特に最終章の「アメリカ社会の老年期」を読んでみたいと思います。そして、エリクソンの人生と思想を重ね合わせながら、「ライフサイクル」という概念について考えてみたいと思います。「老いの知惠」「歴史と物語の力」「祖父母性」「生き生きしたかかわりあい」「死に向かって成長する」という見方は、アンチエイジングが叫ばれ、「若さは美しい、老いは醜い」とみなしてきた現代社会に、新鮮なものの見方を提供してくれるでしょう。
テクスト:E.H.エリクソン、J.M.エリクソン、H.Q.キヴニック(浅長正徳・浅長梨枝子訳)『老年期―生き生きしたかかわりあい』みすず書房。
参考書:L.J.フリードマン(やまだようこ・西平直監訳)『エリクソンの人生 上・下』新曜社。