2013年4月6日 (第3050回)

岩波書店編集長と著者が語る

岩波書店編集局一般書籍編集部編集長 坂本 政謙
立命館大学文学部 教授 崎山 政毅

 直接かかわることのない方々にとって、編集という仕事は、なかなか具体的なイメージを結ばないのではないでしょうか。実は編集者である私にとっても、自身の仕事を説明することは簡単ではありません。

 なぜなら、さまざまな個性の人がいるように、仕事の流儀も編集者それぞれに異なり、またcase by caseで企画や著者への対応も違ってくるからです。なにか、一般的な原則があるわけではない。私は、見よう見まね、手探りで、経験主義的に、trial and errorを積み重ねるなかで、編集者になってゆくのではないか、と感じています。

 その意味では、いまの私自身も編集者たりえているのか心もとないのですが、編集者が経験を積み重ねることだけでは、新しいなにものかは生まれてきません。その生まれる場所に、著者と編集者の出会いがあるのではないでしょうか。

 企画を立て、原稿を依頼し、著者に引き受けていただき、ご脱稿いただくという基本的なプロセス、本づくりのための具体的な工程はいずれもがおなじであるとしても、そのこと自体に編集という営みの本質があるわけではありません。崎山先生を導き手に、その一端にふれ、「なにか読んでみようかな」と思っていただけるようなお話が少しでもできればと思っています。
(坂本政謙)