2013年7月6日 (第3061回)

パゴダを歩く-ミャンマーの宗教・文化・社会

国立民族学博物館 教授 田村 克己

 パゴダ(仏塔)はミャンマーのいたるところに見られる。僧侶の修行する場である僧院とは異なり、在家の人々が仏陀に近づき、仏教の教えに自らを捧げる場である。それゆえ、パゴダは一般に仏陀を意味するパヤーと呼ばれる。

 パゴダで、人々は礼拝し、供え物をし、あるいは瞑想を行う。そこはまた、人々の憩いと出会いの場でもある。パゴダのあちこちで語り合ったり、境内の様々な造形物や参道の土産物店を楽しんだりする姿が見られる。

 ところで、パゴダの境内は僧院同様に、神聖な空間であるために、俗人は裸足で歩かなければならない。慣れないと足の裏の痛さや熱さに閉口してしまう。しかしミャンマーの人々がこともなげに歩いているのを見ると、我々とは異なる、彼らの宗教的な熱意に感心させられてしまう。

 ミャンマーは今「民主化」が進められ、社会の大きな転換期を迎えている。そうしたなかで、こうした宗教的な行為がどのように変容していくのだろうか? 上座部仏教と王権のうえにつくりあげられてきた伝統文化はどのようになるのか? 伝統的な価値観や倫理観とうらはらな、特有の社会関係のあり方は変わっていくのか? あらためて考えていきたい。

20130706