2013年9月21日 (第3069回)

カント「道徳形而上学の基礎づけ」を読む

立命館大学文学部 教授 北尾 宏之

 およそこんにち倫理学を語る場合、カントを抜きにすることは決してできません。カント以降において倫理を語る哲学者はすべて、継承発展をめざすというかたちであれ、批判克服をめざすというかたちであれ、カントと向き合っているといってよいでしょう。今回の講座では、そうした巨星カントの倫理学上の主要著作のひとつである『道徳形而上学の基礎づけ』(この著作は『人倫の形而上学の基礎づけ』あるいは『道徳形而上学原論』と訳されることもあります)をとりあげます。この著作から、まずカント倫理学の基本的な特徴を抽出して紹介し、次にそれに対してこれまでなされてきたいくつかの批判を紹介したうえで、つづいてそれらの批判が汲み尽くすことのできなかったカントの真意を明らかにし、そして最後にそれでも残るカント倫理学にとっての大きな問題についてお話ししたいと考えています。