2013年10月19日 (第3073回)

エスピン・アンデルセンを読む

立命館大学産業社会学部 教授 石倉 康次

 エスピン・アンデルセンは、社会保障や社会福祉制度の仕組みが、社会構造の中にビルトインされている、発達した資本主義諸国について、単一のラインに沿って段階的に発達するものととらえられるものではなく、そこにはいくつかの類型に分類できることを実証的に明らかにしました。その類型論には異論も提出されてはいるが、「福祉資本主義」あるいは、「福祉国家」を理論的実証的に把握する新たな地平をひらいた研究者です。資本主義社会では人間の労働力が商品化されている社会であり、労働力の再生産つまり、自らの日常的な生活の維持再生産や子育てから、病気の治療、あるいは障害を持った時のサポート、老後の生活などにおいても、多かれ少なかれ商品化されています。社会保障・社会福祉制度の成熟は、そのような部面で「脱商品化」を進めるものとアンデルセンはとらえます。さらにアンデルセンは、歴史的に形成され継承されてきている諸勢力の力関係がその有り様に影響をおよぼしているとみて、ある程度継続的に再生産されている型がそこには存在することを、具体的な指標にもとづいた量的分析を通して明らかにしました。その提起は、福祉国家の行方について、実践的視点から理論的・実証的に研究を進めていく道筋を示したものとして、今日も強い影響力をもっています。