2013年10月26日 (第3074回)

デュルケムを読む

立命館大学 名誉教授 佐々木 嬉代三

 マルクスやウェーバに較べると、デュルケムのことをご存じない方が多いと思いますが、彼は社会学という学問にとってはもっとも偉大な先達で、社会学的思考の礎を築いた人物だといって過言ではありません。1858年に生まれ1917年に亡くなる僅か59年の短い人生だったのですが、その間29歳でボルドー大学に赴任し、44歳でソルボンヌ大学に転じ、終始一貫学究の道を歩み続けておりました。その意味では波乱の少ない人生を送ったのですが、しかし19世紀末から20世紀初頭のフランスの内乱や動乱が彼の思考に大きな影響を及ぼしたことは確かでしょう。彼の終生のテーマは、社会秩序はいかにして可能かというテーマであり、この問いに対する答えを求めて彼は、処女作『社会分業論』を記し、『自殺』の社会的原因を尋ね、最後には『宗教生活の原初的形態』にまで遡ったのです。その意味では彼もまた、時代の子でありました。

 ただし本講座では、社会秩序の学として社会学を構想した彼が、同時に脱常識の学としての社会学の祖でもあった点に焦点を絞ります。「犯罪は正常な社会現象である」とデュルケムはいいました。なぜか。考えておいてくださいね。