2013年11月16日 (第3077回)

コヨーテの物語―先住民インディアンのユーモア―

立命館大学文学部 客員教授 荒 このみ

 「先住民アメリカ・インディアンとの最初の出会いは、1964年の高校生のときのことでした。アリゾナ州の保留地で見かけたインディアン女性は、独特の派手な衣装を着ていました。インディアンの子ども病院を訪ねましたが、枕元にラジオがあり、いかに手厚い看護を受けているかという白人側の説明でした。

 その後、アメリカの短編小説を読んでいて出会ったのが、L・M・シルコウの「子守歌」という短編でした。その中で、インディアンの子どもが結核に罹ったために部族社会の母親の元から離され、遠くの隔離病院へ連れさられてしまい、母親とは一生会うことがないという物語の展開に、私が訪ねた病院というのは、その一つだったのかもしれない、と思いました。白人側の意図と、それに逆らうことのできなかった先住民たちの困惑が、この短編によくあらわれていました。

 その後、作者シルコウと知り合い、アリゾナの砂漠地帯や、シルコウの生まれ育った居留地(と今は言いかえるようになった保留地)ラグーナ・プエブロの住む地域を訪ね、アメリカの広さ、アメリカ文化の多様性を学びました。白人文化だけではなく多様な文化を含み込むからこそ、「ゆたかなアメリカ」と言えるのでしょう。