2014年4月5日 (第3088回)

経済学入門-日本経済の見方・考え方-

立命館大学国際関係学部 教授  高橋 伸彰

 「経済学とは経世家(states man)の学問である」。アダム・スミスの言葉です。経世家とは、戦前から戦後にかけて活躍した理論経済学者の杉本栄一(『近代経済学の解明・系譜編』理論社)によれば、必ずしも政治家だけを意味するのではありません。職業の如何を問わず、自分の所属する社会をよりよいものにしようとする情熱を持ち、これを実践に移そうとする人々はすべて経世家になりうるのです。そして、偉大な経済学者は「常に自分が生きている時と処における歴史的課題を洞察し、これを解くべき実践への指針を提供」してきました。その意味で「経済学はあくまで実践的な学問」なのです。

 しかし、「単なる情熱だけでは経済学は勉強できません」と杉本は続けます。「現実の経済社会に沈潜し、それを構成している諸要素がどのように複雑にもつれあいながら運動しているかを、その渦の中に入りながらしかも冷静にこれをみつめなければなりません」と言うのです。学生時代に初めて杉本の著書を手にしたとき、あまりの感動で全身が震えたことを記憶しています。そのときの感動を改めて土曜講座の受講生のみなさんと40年ぶりに共有したいと思っています。