2014年4月19日 (第3090回)

社会理論入門-世界システム論を起点として-

立命館大学国際関係学部 教授 山下 範久

 社会理論とは、社会を実証的に分析するうえで、問題を発見する前提となる枠組みを考える思想的営みです。その背後にあるのは、社会の構造的な変化への関心です。

 そもそも近代化とともに誕生した社会学は、それがまさに近代化という構造的な社会変化を主題とする限りにおいて、すべて社会理論としてスタートしました。

 近年、データの整備や情報技術の進歩と相まって、社会科学の様々な分野で、実証研究の水準は飛躍的に高くなり、ひるがえって社会理論の果たす役割が問われるようになりました。グローバル化がもたらす構造的な社会変動を、適切な時間的・空間的な枠組みで分析するうえで、社会理論の蓄積は重要な参照枠を提供しています。実証研究の技術的進歩が、対象となる社会の歴史を消し去る方向にではなく、むしろ歴史を取り戻す方向に活かされるために、社会理論の役割が重要です。

 今回の講座では、世界システム論に軸足を置いて、主に近年のグローバル化にかかわる様々な主題に関連する代表的な社会理論の入門的なマッピングを提示してみたいと思います。