2006年1月28日 (第2761回)

被災者支援のABC

大学院応用人間科学研究科教授 徳田完二

【息はゆっくり】

 呼吸というのは不思議なものである。呼吸の主たる機能はもちろん、酸素を取り入れて二酸化炭素を排出することだが、それだけにとどまらないさまざまな効能が、呼吸にはある。

 呼吸は心の安定・不安定と密接に関わっている。たとえば、不安や緊張が高まると知らず知らずのうちに呼吸が浅くなる。これを逆手に取ることで、心を安定させることができる。つまり、意図的に深く呼吸をすると、気持ちが落ち着いてくるのである。古来、ヨーガや座禅で呼吸法が重視されてきたのは、呼吸のもつこのような作用が注目されたからであろう。

 心の安定化には胸式呼吸より腹式呼吸がよい。このことは比較的よく知られているようである。しかしその際、吸気よりも呼気の方が重要だということはあまり知られていないのではなかろうか。呼気が重要だというのは、息を吐くときに、心を落ち着かせる作用をもつ副交感神経が活動するからである。

 なお、吸気1に対して呼気2というリズムがいいのだそうである。つまり、息はゆっくり吐くのがよい、ということである。

 先日たまたま見たテレビ番組で、息を吐くときに、動脈硬化を予防する物質が肺から放出されるという事実を知った。息を吐くというのは、二酸化炭素という不要物を捨てるだけの活動ではないのである。