2016年6月11日 (第3168回)

白川静文庫の書籍・資料を通して知る白川学の世界

立命館大学 文学部 教授 芳村 弘道

 今年の10月で白川静先生が逝去されてから10年になります。立命館の卒業生であり、また戦前より長く本学園で教鞭を執られた白川先生は、漢字研究および中国の古典文学・思想・歴史、さらに日本の古代文化など広範囲の領域で独自の優れた業績を示され、2004年に文化勲章を受章されたほか、多くの栄誉を受けられました。2005年に立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所が設立される際、白川先生は御所蔵の書籍・資料の一部分を研究所に寄贈され、週のうち幾日かは研究所で研究・執筆することを計画されていましたが、残念ながら実現成らず長逝されました。御遺蔵の書籍・資料が御遺族の芳志により本学図書館に寄贈され、御生前の寄贈書と合わせて、2010年に「白川静文庫」が設立されました。今年の4月には、平井嘉一郎記念図書館の開館に合わせ、文庫の書籍を一部分、開架して利用に供する特別室が館内に設けられました。一万七千件に及ばんとする文庫の所蔵には、白川先生自筆の原稿・甲骨文トレース・研究ノートなども多く含まれております。今回、「白川静文庫」のこうした貴重資料と書籍を紹介しつつ、白川先生の学問を解説して偉大な御業績を振り返ってみたいと思います。