2016年6月18日 (第3169回)

中国からみた白川文字学

大阪教育大学教育学部 特任准教授 張 莉

 私は日本に来て今年でちょうど20年になります。日本に来てからは、しばらく書道や書論を勉強していましたが、そののち漢字学を学ぶようになり、やがて白川静博士の文字学に出会いました。最初は、中国の文字学者の本を読んでいたのですが、白川文字学に出会い、字源に対する多くの疑問が解けました。ところが、中国ではまだ白川文字学についてその学術的成果が十分理解されているとは言い難い状況です。それで、『白川文字学的精華』を中国で出版することを思いついたわけです。これらの翻訳を通じて白川文字学の正しい評価をしてほしいという願いがありました。白川文字学には、未来を開く文字学の方法論を多く含んでいます。これらを中国の方に理解していただければ、中国の文字学も飛躍的に進化するはずです。今回の講座では、中国の文字学の現状と中国の文字学者が白川文字学をどのように理解しているかについて述べたいと思います。また、白川博士の「民俗学的方法」を用いて、古代中国の民俗と文字とのつながりを検証します。西双版納のハニ族やタイ族の生活は、古代中国の習慣を多く残しています。彼らの習慣には漢字との接点があります。それらについて言及してみたいと思います。