2016年8月20日 (第3174回)

市民の力で核のない世界を ―原爆の図アメリカ展と米国NGOヒバクシャストーリーズの取り組みか

公益財団法人「原爆の図丸木美術館」 理事長 京都橘大学 人間発達学部 教授 小寺 隆幸

 オバマ大統領の広島訪問は何だったのか。被団協はオバマ氏の広島再訪を求める決議をした。訪問前、苦悩の末「謝罪を求めない」と表明した被団協が異例の方針を決めるほど、被爆者の失望と怒りは深い。そもそもプラハ発言以降も米国は核戦力高度化を進め、オバマ個人の思いは巨大な軍産複合体の前で無力だった。しかもオバマと安倍は、今回の訪問を、原爆を落とした米国と戦争を始めた日本が共に責任に言及せずに区切りをつけ、集団的自衛権行使を含む強力な日米同盟の未来を謳う場にしてしまった。

 今、世界では被爆者の長年にわたる訴えが実り、核兵器使用禁止条約をめざす取り組みが進む。アメリカ社会も教育や文化を通して確実に変わりつつある。講演では昨年の原爆の図アメリカ展やヒバクシャ・ストーリーズの取り組みの中で感じた変化を紹介したい。

 しかし日本では、戦争をする国に変えるため戦争の記憶を消し去る動きが様々な場で起きている。そして日本政府は核兵器使用禁止の未来の可能性に目を閉ざし、核抑止にしがみつく。「過去に目を閉ざす者は未来に対してもまた盲目となる。」ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の言葉を日本の現状への警告として受け止めねばならない。