2016年9月24日 (第3179回)
説明を理解するしくみ - 説けばそれで終いか?
立命館大学 総合心理学部 教授 山本 博樹
説明に関する問題は,いまや社会的な問題として認識されており,説明責任の名のもとに広く人々の関心を集めています。もとより,現代社会は,説明によって成り立つ説明社会です。この社会では,だれもが説き手の役割を果たさなければならず,説明が悪いと社会的な責任を問われかねません。それでは,良い説明の要件とは何でしょうか。澄んだ声で朗々と発声することでしょうか。説明とは説いて明らかにすることだったはずです。ここには,受け手の理解不振が含意されていますから,受け手の理解不振を改善する支援行為としての成否が問われると考えられます。ここに説明の本質的な難しさがあります。それでは,そもそも説き手は受け手の理解不振を把握し改善できるのでしょうか。どのような説き方をすれば, 受け手の理解を改善できるのでしょうか。子どもと高齢者に,同じ説き方でよいのでしょうか。理解不振が改善できればそれで説明をお終いにすべきなのでしょうか。認知科学の知見に基づいて理解のメカニズムをおさえた上で,これらの問いに答え,説明のあり方を考えていきたいと思います。