2016年11月12日 (第3185回)

写真イメージのグローバル化における「世界」の表象─「人間家族」展のワールドツアー─

立命館大学先端総合学術研究科 准教授 竹中 悠美

 世界中の文化圏で人々は固有の「芸術」を創造し、享受してきました。人と作品の移動はそれぞれの「芸術」に変化をもたらしました。造形芸術の中でもとりわけ「西洋美術」は、20世紀の間に世界中に広まりました。制作技術や作品様式や美的感性だけでなく、「美術館」と呼ばれる制度や、コンセプトを練って作品を選び、配置を考え抜く「美術展」という展示と鑑賞の方法を伴って、西洋美術のグローバル化は起こったのでした。

 本講座では「美術展」のグローバル化を最も顕著に示す例として、1955年にニューヨーク近代美術館で企画された「ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)」展を見ていきます。写真イメージを世界の共通言語と考え、38カ国の数百にも及ぶ地域を巡回したこの写真展は、いかなる世界観を持ち、どのような写真をどう展示したのでしょうか。そしてそれは各地でどう受けとめられたのでしょうか。この写真展を世界に送り出した思惑と、写真展を開催した各地の思惑。同時多発的に世界で実行されたこの「たくらみ」を聴講者のみなさんと考えていきたいと思います。