2016年11月19日 (第3186回)

中国仏教美術の「本流」―インド文化と中国文化の往還―

立命館大学 文学部 准教授 西林 孝浩

 中国や韓国、そして日本といった東アジア地域で豊かに展開する仏教美術ですが、言うまでもなく、仏教はインドにおいて始まる宗教なのであり、東アジアの人々にとっては、外来の宗教として受け入れられた経緯があります。では、受け入れられた東アジア各地域本来の伝統的な文化や芸術、あるいは思想や価値観と、どのような関係を持ちながら、展開することになるのでしょうか? ここでは中国の仏教美術を例として、インドや中央アジアの仏教美術と比較しながら、インド文化と中国文化の間を揺れ動く中国仏教美術のありさまを考えてみたいと思います。世界遺産にも指定される敦煌・雲岡・龍門は、中国三大石窟と呼ばれますが、南北朝~唐の時代のそれらの活発な造像時期には、信仰にもとづいた願いのみならず、皇帝権力や仏教庇護者の思惑も透けて見えることがあります。石窟内に表現された彫刻や絵画の様子を写真や図面で確認いただきつつ、お話できればと思います。