2017年2月25日 (第3194回)

歴史文化都市の防災と建築史学

立命館大学理工学部・講師 青柳 憲昌

 長い歴史に培われた“生きた文化”をもつ歴史文化都市において、私たちは今日まで受け継がれてきた文化的価値を損なわないように、まちを維持・管理していかなくてはなりません。社会的に関心が高まっている都市防災についても例外ではなく、通常よりも困難な問題に取り組まざるを得ません。たとえば現代の耐震基準に適合しない古い建物を保存する場合などがそうですが、文化的価値の保存が都市防災の観点からマイナスになってしまうことはよく見られます。

 その一方で、多くの歴史都市は「防災文化」ともいうべき地域固有の“文化”を育んできました。そもそも「家」というものが雨風を防ぐシェルターであったように、およそ人間の建築的な営みは根源的に「防災」と密接な関係にあるといえます。現代人は忘れつつある「防災文化」の価値を新たに発見し、そこに現代性を付与しつつ継承することは、今後の都市防災にも有効でしょう。

 これまで日本人はどのように「防災」を捉え、実践してきたのか。「防災」は歴史的な都市や建築にどのように反映しているのか。本講演では、その例として、近代京都の都市形成史、飛驒高山の町家建築史、大阪府・富田林寺内町の都市史などを取り上げつつ、このことを考えてみたいと思います。