2017年5月27日 (第3204回)

デジタルゲームの感性学~イリュージョンと没入

立命館大学先端総合学術研究科 教授 吉田 寛

YOSHIDA 私の専門は感性学です。感性学は英語ではaestheticsといい、日本語では美学という訳語もあります。感性学は哲学をベースにわれわれの感性や感覚にアプローチする学問ですが、 私はそこに認知科学や工学の知見や視点も加えようとし

ています。

 学生時代の私は芸術、とくに音楽を主な研究対象としていましたが、 立命館大学で教職に就いてから、ゲームを新たな研究対象に加えました。その結果、現在ではすっかりゲームが私の研究や教育活動の中心を占めています。

 小学生の頃にテレビゲームと出会ってから今日まで、私はずっとデジタルゲームのプレイヤーです(あまり上手ではありませんが)。 そうした経験から私は、コンピュータが作りだすゲームの世界は、機械と人間の関係を考えるうえで、そして技術やメディアの進歩の中で、 われわれの感性がどのように変化してきたのかを理解するうえで、格好のフィールドだと考えています。

 今回の講座では、デジタルゲームが プレイヤーにどのようなイリュージョン(空間や運動の錯覚)を与えるのか、そしてプレイヤーはゲームの世界にどのように没入する(感覚や注意力がのっとられる)のか、 ということを中心にお話しします。