2017年6月10日 (第3205回)

先住民のアメリカ-環境と文化-

立命館大学先端総合学術研究科 教授 渡辺 公三

 氷河期の終わりごろ、まだ溶けていない大量の氷河のために海面が今より100メートル以上も低く、 今のベーリング海峡をつないでいた陸橋を渡って、ユーラシア大陸から移住した人々(プロト・インディアンと呼ばれる)が 南北アメリカ大陸に住む先住民となった。彼らにとって初めて接する自然はどのように受け止められたのか。 彼らはどのように両大陸に広がっていったのか。移動と定着の過程で何が起こったのか。 私たちは何を手掛かりにそうしたことを知ることができるのか。 一万年ほどの時を経て彼らが「新世界」として「発見」された後に、ヨーロッパから到来した人々は彼らの世界をどう変えたのか。 America Firstの声高なスローガンの陰で忘れられがちなアメリカ先住民の世界を、 文化人類学の成果と歴史研究の成果を通してあらためて見直す道筋をさぐってみたい。