2017年12月2日 (第3222回)

現代社会のテクストとしての「ツーリズム」

立命館大学文学部 教授 遠藤 英樹

 現代社会は多くの人びとが自由に旅行できるようになった社会として、「移動」によって特徴づけられていると言えます。そうなるにしたがい、ツーリズムは、現代社会の特徴(すがた:figures)が先鋭に現れる場所(トポス:topos)となってきています。ツーリズムという窓、ツーリズムという視点からみることではじめて顕わになる現代社会における特徴は、少なくありません。その意味で、現代社会は、ツーリズムによって特徴づけられる社会=「ツーリスティックな社会」と言うことができます。現代社会のあり方を読み解いていくためには、ツーリズムという現象を無視することは決してできないのです。しかしながら、これまで人文・社会科学は、現代社会のあり方を透徹して考えるべきものであるはずにもかかわらず、観光現象を軽率なもの、学問として取り扱うべきでないものとして、充分に研究を蓄積してきませんでした。本講座では、現代社会を読み解くテクストとしての「ツーリズム」について考えていきたいと思います。