2017年12月16日 (第3224回)
観光客の歓待をめぐる諸相―与論島を事例として―
立命館大学文学部 教授 神田 孝治
2020年東京オリンピックの招致にあたって、 「おもてなし」が重要なキーワードとされたことは記憶に新しいかと思います。こうした外来者の「歓待」は、古代神話の時代から注目されてきたもので、近年では観光業をはじめとするサービス産業においてしばしば強調されるものとなっています。かかる歓待について哲学者のルネ・シェレールは、「歓待、それはまことに捉えがたいものである。唯一の形式のもとに固定し、一義的な意味で捉えようとするなら、歓待はたちどころに身をかわしてしまう。それは私的なものでもあれば公的なものでもあり、現前しもすれば不在でもある。」と指摘しています(『歓待のユートピア─歓待神礼讃』現代企画室, 1996)。歓待とは、多面的で複雑なものなのです。この講座では、こうした歓待の特徴と、その観光との関係性について考えます。特に、鹿児島県の南端に位置する与論島を事例として取り上げ、同島の観光地化の過程で生じた観光客の歓待をめぐる諸相について検討します。