2018年1月20日 (第3226回)

近代京都と中国書画:長尾雨山関係資料からみえてくること

京都国立博物館学芸部 主任研究員 呉 孟晋

 日本の文化芸術に大きな影響を与えた中国の美術品は「唐物」と呼ばれ、ここ京都にも足利将軍家の東山御物をはじめ名品の多くが残されています。しかし、明治・大正・昭和初期の京都もまた中国の学術文化の発信地であったことはあまり知られてはいないかもしれません。

 東京という政治・経済・文化の中心から距離をおいた京都では、日本画の京都画壇をはじめ、近世的文化を素地にして近代的要素を加味した動きがみられます。急激な西洋化のなかで中国文化の重要性は相対的に低下しますが、1911年の辛亥革命を契機に清朝の重臣だった羅振玉が京都で生活したこともあり、これまでの儒教的な漢学をもとに実証的な中国学が隆盛します。

 本講座では、京都帝国大学(現京都大学)教授の内藤湖南とともに中国書画鑑定の大家であった漢学者・長尾雨山(1864-1942)にまつわる新出資料をとおして、近代京都で隆盛した「中国書画ブーム」についてご紹介いたします。11年におよぶ中国生活の後、京都で暮らした長尾雨山が打ち出した、中国書画の新しい見方とはなにか。勤務先の京都国立博物館にも「土曜講座」がありますが、今回は立命館大学の「土曜講座」に「出張」して、お話しできれば幸いです。