2018年2月10日 (第3229回)

公正な社会を阻んでいるものは何か ――障害者差別解消法と合理的配慮概念を手掛かりに

立命館大学生存学研究センター 客員研究員 大阪市立大学 非常勤講師 松波 めぐみ

 ご記憶の方もいるだろう。昨年(2017)年6月、奄美空港で車いすを使う男性が、LCC(格安航空会社)であるバニラエア機への搭乗を拒否され、やむなく腕を使ってタラップを這い上がるという事件があった。この件では男性が、2016年から施行されている障害者差別解消法に基づく相談窓口に相談したことにより、バニラエアが「不当な差別的取り扱い」(要は差別)を行ったことが認められ、改善策として設備が購入された。もう同じような差別は許されなくなったのである。法律ができたことの成果といえる。

 ところが、この件に対する世間の反応はとてつもなく奇妙だった。最初こそ同情が起こったが、「事前連絡しなかった」等、見当違いな理由で男性へのバッシングが起こったのである。まだまだ障害のある人が同じ「権利」を享受できるよう社会を変えていくという法の趣旨が知られていないこと、障害者の生活は制限されて当たり前と思われていることを私は痛感した。

 講座では、法律やキーワードの「合理的配慮」について、具体例も使ってわかりやすくお話ししたい。あなたも私も安心して生きられる「公正な社会」とは?それを阻むバリアを取り除くために何ができるのかを一緒に考えてみたい。