2018年2月3日 (第3228回)

障害者運動と法制度の現在 ――障害当事者の立ち上がりから障害者権利条約批准まで

立命館大学生存学研究センター 客員研究員 認定NPO法人 DPI日本会議 副議長 尾上 浩二

 日本政府は2014年に国連・障害者権利条約を批准しました。この条約は、「障害は、機能障害と社会的障壁の相互作用によってもたらされる」との社会モデルの考え方に基づき、あらゆる形態の障害者差別を禁止し、分け隔てられることのないインクルーシブな社会を各国政府に求めています。

 障害当事者が社会運動の主体として登場して半世紀近くが経ちます。当時、「障害の社会モデル」という言葉はまだありませんでしたが、「障害者が街に出れば差別に当たる」と社会による障壁を直感的につかんでいました。社会的障壁に立ち向かい、施設や病院ではなく地域で、共に学び育つ保育・教育を、誰もが使える交通機関をと求めた運動が果敢に取り組まれてきました。

 当初は「異端視」された障害当事者運動は長年の取り組みを経て、2013年には障害者差別解消法の制定を実現し、権利条約の批准に至りました。一方、昨年7月には権利条約や差別解消法が目指すインクルージョンとは真逆の障害者排除を企図した相模原障害者殺傷事件が起き、あらためて障害者差別の根深さを示しました。

 本講座では、障害者運動に40年近く関わってきた講師の経験も交えながら、障害者運動と法制度に関する歴史を紹介するとともに、今後の課題をともに考えていきたいと思います。