2018年3月17日 (第3233回)

社会病理をめぐる地域健康社会学 ~臨床社会学のアプローチから~

立命館大学産業社会学部 教授 中村 正

 ソーシャルペダゴギーという言葉があります。これは、「社会教育・市民教育」「社会における子育て」等と訳されています(関係者で「日本ソーシャルペダゴギー学会」を発足させました)。福祉と教育を横断する概念です。聞きなれない言葉ですが、ヨーロッパでは子どもの育ちを支える理念や実践として広く普及しています。施設や里親での子育てを含めた社会的養育を支える政策や実践のもとになる考え方です。アロマザリングやアロケアリングという言葉もあります。親以外の他者たちも含めた子育てのことを意味します。アロ(alllo)は「他の」という意味です。さらにますます重要となる高齢者虐待問題では介護する人を支援する「養護者支援」が虐待対策のカギとなる言葉です。同じように子ども虐待問題でも「養育者支援」は子育て支援のカギとなります。そしてそうした支援を可能にするのが地域なのです。社会で支える養育と養護は地域のなかの他者たちの多様な共助によって可能となります。参加、包摂、統合、協働が健康の課題になることを各種の社会問題や社会病理の解決という視点から考えてみます。排除や格差という関係性の病理こそが地域での健康創出のために克服すべき対象となります。そんな諸相を検討していきます。